アメリカ海外実習レポート(坂上 勝基 )

2012年4月22日から5月5日までの2週間、米国のプエルトリコ・サンファンとワシントンDCにおいて実施された海外実習「人的資源開発に関する最先端の研究と実践の調査」に参加させていただきました。以下、その報告をさせていただきます。

FS2012Sakaue3前半の一週間はプエルトリコ・サンファンにあるホテル、カリベ・ヒルトンで開催された比較国際教育学会(Comparative and International Education Society: CIES)の第56回国際大会に参加しました。大会期間中は第一線で活躍されている研究者や実務者の発表を聞くことで、比較国際教育学や国際教育開発論に関する最新の研究についての知識を深めることを目的に、積極的に様々なセッションやワークショップ参加し、発表者に質問することを心がけました。まず大会初日の4月22日に行われたワークショップ、「Using IEA databases for secondary analysis」に参加し、国際学力テストのTIMSSやPIRLSを実施していることで有名な国際教育達成度評価学会(The International Association for the Evaluation of Educational Achievement: IEA)から来られた講師から、適切なサンプリング・ウェイトの処理方法等についての指導をうけることができました。また報告者が専門とする経済学的アプローチからの研究発表のセッションや、アフリカ研究者によるセッションに多く参加していく中で、研究手法やフィールドが同じ、スタンフォード大学やペンシルベニア大学、オックスフォード大学といった海外の大学院生の方々の発表を聞き、直接交流することもできました。そして、普段先行研究として引用している学術論文の著者による発表を直接聞くことができたこと、レセプションなどの場で過去にGSICSでセミナーや講義をしてくださった方々と再会できたことなどは、大きな喜びでした。さらに、大会最終日の4月27日には、ウガンダの教育に関するセッションにおいて「Analyzing the Effectiveness of Primary Schools in Rural Uganda」という題目で、自らの研究成果発表を行い、ウガンダの教育研究者や、アフリカの教育開発に関わる実務家の方々から多くの貴重なコメントをいただき、ネットワークを築くことができたことは、大変大きな収穫でした。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA後半の一週間はワシントンDCへ移動し、教育開発援助の最先端の現場の状況や、世界銀行をはじめとする国際機関で今まさにどのような人材が求められているかを理解することを目標に、世界銀行本部や米国国際開発庁の教育案件を多く手掛けるFHI360、米州開発銀行(Inter-American Development Bank: IDB)で本実習のために用意されたセミナーやミーティング、世界銀行本部内やJICA米国事務所で行われたBBL(Brown Bag Lunch)に参加させていただきました。世界銀行本部では、アフリカ地域総局、人間開発局の教育スペシャリストであられるInoue Keiko氏、ヨーロッパ・中央アジア地域総局、人間開発局の教育エコノミストであられるKatayama Sachiko氏、南アジア地域総局、人間開発局のシニアエコノミストであられるLeopold Remi Sarr 氏から、現在担当されているプロジェクトの状況や、世界銀行で職を得るためにどのような準備が学生時代に必要かについて直接お話を伺う、大変貴重な機会をいただきました。多くの方が、世界銀行においてはSTATAを駆使してインパクト評価などが出来る人材や、スキル・ディベロップメントや高等教育、ECD(Early Child Development)といった基礎教育以外のサブセクターを専門とする人材に対する需要が高まっていることを指摘されていたことが印象的でした。また米州開発銀行では、GSICS修了生の西江真理氏から短い時間ではありましたが、IDBの特徴や国際公務員として長年働いてこられた経験談をお聞きすることができました。

研修全体を通して、国際機関で仕事を実際に得るために自らの分析能力を示す目に見える研究実績と、自らをアピールし売り込んでいく貪欲さや積極性、交渉力、コミュニケーション力の重要性を肌身で実感し、チャンスを掴むためには、普段のGSICSでの研究生活に対する姿勢から、根本的に意識改革をしていく必要があることを痛感させられました。また、博士課程後期への進学を希望している報告者にとって、人的資源開発に関する最先端の研究や実践の状況に触れ、現在の自分のレベルを知り、目指すべき方向性についての明確な指針を得ることができたことは、非常に有益でした。

最後になりますが、貴重な時間を割いて、セミナーやミーティングにご参加いただいた世界銀行やFHI360、IDBなど訪問先の方々、研修プログラムをコーディネート、サポートして下さった野村真作氏、荘所真理氏、畠山勝太氏、そして、このような素晴らしい機会を提供してくださった指導教官の小川啓一教授に深く感謝申し上げたいと思います。