ベトナム北部における高度海外研究(梅野 知子)

2014年4月9日から27日までハノイとその近郊で、児童労働に関する調査と資料収集を行いました。調査目的の1つは、働いている児童へのインタビューを通して、働いている理由、仕事内容、1日のスケジュール等、詳細な情報を入手して多様な児童労働の現状を理解することです。2つ目の目的は、児童労働撲滅に関する政策資料を収集することです。そのために、国際労働機関(ILO)、ベトナム労働・傷病兵・社会省(MOLISA)、ベトナム教育訓練省教育開発局(VIED-MOET)、ユニセフ、NGOなどで、より多くの政策担当者と面談することを計画しました。

AOR_Vietnam_Umeno4まず、児童労働に関する調査では、ハノイ市、タインホア省、ランソン省で計23名の働いている児童、もしくは若者にインタビューしました。インタビューの結果から、児童労働の要因として①両親の離婚や病気による家庭の経済的要因、②子供の教育に対する期待が薄いなどの家庭的要因、③子供の成績不振、勉強に興味がない等の子供本人の要因、の3点が明らかになりました。上記に加えて、地方と都会では、子供をめぐる環境が大きく異なっていました。ハノイのような都会では経済的な理由で、現金収入を求めて物売りや靴磨きをする児童が多く見られました。また、インターネットカフェやゲームセンターなどで使うお金がほしくて働いている子供もいました。一方、主な産業が農業のために機械化されていない地方では、子供は貴重な労働力となります。その結果貧しい家庭では、家畜の面倒や家事をすることが子供の仕事となっていました。また中国との国境地域では、両親が中国に働きに出て子供が全ての家事労働をしている家庭もありました。

次に児童労働に関する政策に関しては、ILOベトナム事務所のNguyen Mai Oanh氏とMOLISAのMai Duc Tien氏と面談しました。面談では最新のレポートをもとに、ベトナムでの児童労働の詳細な定義や政策の現状と課題について話を聞くことができました。加えて児童労働に関する最新の政策案や労働法改定に関する貴重な資料を入手しました。一方、ベトナムの基礎教育政策に関しては、教育省の教育計画次長のLeKhanh Tuan氏、UNICEFの教育スペシャリストのLe Thi Minh Chau氏と面談することができました。特に、どのように子供や両親に教育に関心をもってもらうか、その具体的な教育省の方針を聞きました。最後に働いていている子供やストリートチルドレンをサポートしているNGO担当者、Nguyen Hoa氏とNgac Lin Chi氏から現状の課題や支援方法などを聞きました。それらは、草の根レベルのサポートを考える貴重な機会となりました。上記の調査や面談を通して、2次データから得ることのできない貴重な情報を得るとともに、研究の目的や動機を見直すことができました。

最後にこのような貴重な機会を提供してくださいました、小川啓一教授に改めて感謝申し上げます。また、斉藤喜久教授とHoaさん、Hienさん、Sonさんのサポートなく、私一人でこの調査をすることは出来ませんでした。多大なるご尽力を頂きまして、心より御礼申し上げます。そして、博士論文の副査として、ベトナム現地調査に関するアドバイスを下さいました島村靖治教授、ベトナムでの貴重な時間を共有したHaさんに改めて御礼申し上げます。