開発運営政策セミナー「ポスト2015に向けた国際教育協力―アフリカを事例として―」が開催されました

2014年7月14日(月)、神戸大学大学院国際協力研究科棟1階大会議室において開発運営政策セミナー「ポスト2015に向けた国際教育協力―アフリカを事例として―」が開催されました。本セミナーでは大阪大学大学院人間科学研究科助教の川口純氏とウガンダ・マケレレ大学講師のJames Wokadala氏をお招きし、本課題についてのセミナーをして頂きました。また指定コメンテーターとして神戸大学大学院国際協力研究科教授の小川啓一氏、及びウガンダ教育スポーツ省上級教育政策専門家で、本国際協力研究科博士課程後期在籍のJeje Moses Okurut氏がご出席されました。

本セミナーは2部構成となっており、第1部では川口純氏に「ポスト2015において社会的弱者の子ども達をどのように学校に組み込むか―マラウイにおける障害を持つ生徒への教育を例として―」という題名の下、ご発表をして頂きました。川口氏はいくつかの障害のカテゴリーについて述べられ、それぞれの生徒の統計的な数を我々に提示して下さいました。その上で開発途上国においてそのような障害を持つ生徒の就学状況は、健常な生徒に比べて未だ芳しくない傾向にあり、それはマラウイにおいても同様であると川口氏は述べられました。セミナーの中で同氏が強調されたのは、障害のある子どもを含むすべての子どもに対して一人一人の教育的ニーズにあった教育を行う「インクルーシヴ教育」とは基本的人権に基づく政治的アプローチと費用対効果に基づく経済的アプローチの二つの異なる概念を基盤としているということでした。加えて同氏は御自身の研究テーマであるマラウイにおける障害を持つ子どもの就学を阻害している要因、インクルーシヴ教育への評価、及びインクルーシヴ教育の今後の改善について、同氏が行った調査を踏まえた仮説的結果と結論を我々に対して教授して下さいました。

第2部では、Wokadala氏によって「ポスト2015における基礎教育の有効性と効率性について-成果と課題、及び機会-」についてご発表が行われました。同氏はまず本セミナーに集まった研究者に対し、有効性、効率性が真に意味することとは何かということを尋ねられました。その上で同氏は特に効率性の重要性について強調され、事例としてサブサハラアフリカにおける内部効率性と外部効率性について具体的に統計的指標を示しながら説明を行って下さりました。セミナーの締めくくりに、同氏はサブサハラアフリカにおける基礎教育の非効率性の原因について述べられ、ポスト2015に向け同地域は開発パートナーの基礎教育分野への国際的な援助・協力を受けながら、さらなる知識集約型社会の促進に焦点を当てていくことが必須であると強調されました。

以上の二つのセミナーの後、指定コメンテーターである小川啓一教授とJeje Moses Okurut氏はそれぞれ講義に対し意見を述べられました。 Okurut氏は第1部の講義について、「社会的弱者の子ども達」という言葉が何を意味するのかという具体的な定義をより明確にすること、異なる障害をもつ子ども達について、より分析を深める必要性があるという二点を述べられました。また第2部の講義について、同氏は講義の主題であった教育システムにおける有効性と効率性を反映することができるような講義を組み込むことの重要性をWokadala氏に対し指摘されました。

続いて同じくコメンテーターの小川啓一教授は、はじめに川口氏の講義のテーマの重要性について言及されました。しかしながらマラウイの事例におけるインクルーシヴ教育の費用対効果においては疑問視され、教員養成についていくつかの疑問を投げかけられました。その上で同氏は御自身のマラウイでの生徒や教員の状況に関わる経験を述べられました。同様に、Wokadala氏の講義についても小川氏は費用を減らし効果を大きくするために取り組むべき資源や資金問題の重要性について述べられ、またセミナーで使用された資料に関して、いくつかの修正点を挙げられました。

セミナーの最後には集まった研究者による非常に活発で熱心な質疑応答行われ、最後は講師、コメンテーターへ向けた大きな拍手でセミナーは幕を閉じました。本セミナーは参加した大学院生にとっても教育に関する知識をより深める事の出来る非常に有意義な機会となりました。

この場をお借りしましてセミナーを行って下さった川口純氏、James Wokadala氏、講義により深みを与えて下さった指定コメンテーターのJeje Moses Okurut氏、及び同じくコメンテーターであり、このような機会を設けて下さった小川啓一教授に学生一同、心より感謝申し上げます。

(文責:神戸大学大学院国際協力研究科博士前期2年 安岡亜寿香)