ワシントンDCでの海外実習報告(坂上 勝基)

2015年3月7日~20日までの2週間、ワシントンDCでの海外実習に参加させていただきました。国際学会への参加や第一線で活躍する専門家へのインタビュー等を通じ、私的教育費用の役割とウガンダの初等教育開発に関する博士論文執筆に必要な情報を収集するという目的を持って、実習の様々な活動に取り組みました。

Sakaue2015_2実習の前半は、3月8日~13日にワシントンヒルトンで開催された比較国際教育学会(Comparative & International Education Society: CIES)の第59回年次総会に参加しました。今回の総会では「Ensuring Primary School Attendance in Uganda: Effects of Private Financing under the Universal Primary Education Policy」という題名の研究成果の口頭発表を、「Equitable Access to Education: Public-Private School Options」というセッションで行いました。さらに最先端の研究の動向を知り、研究者・実務者の間にネットワークを構築するため、自身の専門分野に関連する様々なセッションに参加しました。また2013年12月までの高度海外研究期間中、客員院生研究員として在籍していたピッツバーグ大学国際教育研究所(Institute for International Studies in Education: IISE)主催のレセプションに参加し、ピッツバーグ大学在籍時代のネットワーク維持のための有益な機会を得ることができました。

実習の後半は、ワシントンDCにある主要な援助機関を訪問し、自身の研究テーマに関連する教育開発プロジェクトに関わる専門家へのインタビューを実施しました。この中でまず、教育成果向上のためのシステム・アプローチ(Systems Approach for Better Education Results: SABER)で教育開発における民間セクターの役割に関する評価チームのリーダーで、教育スペシャリストのOni R. Lusk-Stover氏へのインタビューを通じ、SABERが本案件の評価で使用している分析枠組みやサブサハラ・アフリカ地域の国の事例研究の成果等について情報を収集することが出来ました。また、教育のためのグローバル・パートナーシップ(Global Partnership for Education: GPE)でエリトリア、ケニア、レソト、南スーダン、ウガンダ担当の上級国家事業官であられるFazle Rabbani氏へのインタビューを行いました。本インタビューを通しては、ウガンダの初等教育開発で最も大規模なプロジェクトの一つである「ウガンダGPE教員・学校効果プロジェクト」の現状に関する、大変貴重な情報を得ることが出来ました。

さらに、ワシントンDCで国際教育開発分野の第一線で活躍される研究者・実務者へのインタビューを通して、研究・プロジェクトの最新の動向に関する多くの情報を収集することができました。具体的には、ジョージ・ワシントン大学の講義を聴講し、同大学の大学院生や修了生との交流会に参加する機会がありました。また世界銀行本部の教育セクターマネージャーのHarry Anthony Patrinos博士、リード教育スペシャリストのLuis Benveniste博士との会合に参加し、さらに、世界銀行本部でご活躍されている日本人専門官の方々との会合を通して様々なことを学ぶこともできました。神戸大学客員教授であられたVinay Bhargava博士やMark Ginsburgh博士、Eduardo Vélez Bustillo博士、Robert Prouty博士、さらには昨年夏のインターンシップ期間中、客員研究員として在籍していたFHI360のスタッフと再会し、ネットワークを強化することが出来たことも大変有益でした。さらに今回は、米国教育省が実施している教育評価について学ぶ機会もあり、有益でした。

今回の海外実習を通じ、国際教育開発分野の最新の動向に加え、博士論文高度化に役立つ多くの知見や貴重な情報を得ることが出来ました。そして、米国における貴重なネットワークの形成・維持、さらには報告者の将来の研究やキャリア形成のための基盤形成に役立てることが出来たと考えています。

末筆になりますが、このような素晴らしい機会を提供してくださった指導教官の小川啓一教授、実習の会合のアレンジをはじめ、公私にわたる様々な面で暖かな支援をしてくださった小川研究室修了生の先輩方、野村真作博士、荘所真理博士、田中伸幸博士、野村美穂氏に心からの謝意を表したいと思います。

博士課程後期課程2年
坂上勝基