ワシントンDCでの海外実習報告(李 聡)

私、李聡(Cong LI)は、2016年8月6日から13日にかけて、小川啓一教授が米国ワシントンDCで実施された海外実習「国際援助機関の人的資源開発支援に関する調査」に参加いたしました。私たちは、世界銀行本部、米州開発銀行本部、ジョージワシントン大学、FHI360などの国際機関、大学や国際NGOを訪問し、第一線で活躍されている専門家の方々へのインタビュー調査を行い、それぞれの機関で開催されたセミナーへ参加したり、専門家へのインタビュー調査も行いました。また、世界銀行本部の図書館を中心に資料収集も行いました。その中で、本実習で大きく学んだ点を二点及び感想を一点ご報告いたします。

まず一点目は、人とのコミュニケーション及びネットワークの重要性です。私たちが訪問したのは国際NGOで勤務されている方、大学院の教授、国際援助機関で勤務されている若手から要職のスペシャリストやアドバイザーまで多岐に渡ります。如何に限られた時間の中で、相手と有効的に質の高いコミュニケーションをするかは重要だと思います。私は下記の二つの側面からこの海外実習でのインタビュー調査を準備しました。事前にインタビュー対象者の経歴、専門分野などを調べ、特定の問題領域に焦点を当てて聞きたいことを考えました。また、この実習は参加者それぞれ自分の研究テーマを加味し、研究の関心や視野を広がるのが趣旨の一つですので、私は「中国をはじめとした新興ドナーの対外援助の効果と評価」というテーマに基づき、インタビュー対象の専門領域に合わせて、質問や話の内容を調整しました。国際的な場で専門家の方々と接触し、自分の意志を的確に伝えること、相手の意見を正確に理解することは簡単なことではありませんが、今後もコミュニケーションの向上において一層努力をしたいと思います。また、開発途上国における人的資源開発を始め国際社会の諸問題についての討論を含んだインタビューをした時に、同じイシューに対する見方は時々一致しない、ということがあるのは当然です。意見の不一致を認めて尊重し、その不一致に関わらず語り手の考え方、話の内容を重視すべきだと思いました。

IMG_1231さらに、ソーシャル・ネットワークは常に人と人の間の相互交流をスムースにするので重要だと思います。今回の実習と通じて、専門的かつ実践的な知識や経験を習得しただけでなく、幅広いネットワークを構築して今後の研究活動に活用することの重要性を学びました。私の宿泊先のハウスメートは偶然にも世界銀行本部の教育部署で勤務されている方で、彼の上司は、小川ゼミのOBの方でした。彼にインタビューのアポをとり、世界銀行での様々な経験を私たちに共有してくださいました。私が彼に面会を頼んだのは、その方の経験を海外実習に参加している他の学生にも聞いてもらいたかっただけではなく、小川教授が全ての面接をアレンジしてくださったので、自分からも積極的にアポをとり貢献したかったからです。

二点目は、進路を形成するにあたっての過程と方法の重要性を学びました。本実習を通じて、世界銀行や米州開発銀行といった国際援助機関におけるキャリア形成に関して専門家の方々から直接に話を聞くことができました。自分の関心、能力、目標と合わせながら、適切な道を歩くための方法を探し出すのは重要だと再認識しました。そのためには、小川先生や国際機関等で勤務されている専門家の方々とのコミュニケーションを通じて、「情報の非対称性」を乗り越えて、普段手に入れない情報を得ることが重要だと思いました。

最後に、自分の感想を述べたいと思います。中国出身の留学生の私から見ると、アメリカと日本は同じく世界有数の先進国であるにも関わらず、仕事場の点であれ、人間関係の点であれ、人々の生き方の点であれ、アメリカのワシントンDCは日本の都市部とはだいぶ違うと深々感じました。中国と比較して、アメリカを認識しながら日本を見直すことができました。世界の他のどことも異なり、ここは文化、人種、生き方の多様性が尊重され、多元的共存(pluralism)が重視される所だと感じました。

私は国際協力研究科在学の大学院生ではありませんが、本海外実習を通して大変有意義な機会を提供してくださった小川啓一教授には、とてもありがたく思います。この場をお借りしてお礼申しあげます。また、ご多忙の中、私たちに貴重なお時間をくださった上記の国際援助機関、大学機関、国際NGOでご勤務されている西江真理氏、宮島智美博士、James H. Williams教授、Casey Wilson氏、Vinay Bhargava博士、Linghui Zhu氏、Mabruk Kabir氏には心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

(文責:神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程前期1年 李聡)