第二回国際ハイブリット学会がダッカ大学(バングラデシュ)にて開催されました。
2023年2月14日から15日にかけて、第二回国際ハイブリッ...
2014年10月31日(土)、国際協力研究科棟1階大会議室にて、神戸大学大学院国際協力研究科が2014年4月より中核となり実施している日本学術振興会研究拠点形成事業(アジア・アフリカ学術基盤形成型)「アジア・アフリカにおける教育行財政研究と持続的な若手研究者の育成(コーディネータ:小川啓一教授)」の第3回のセミナーが開催されました。「ポスト2015における国際教育開発・協力」に焦点を当てた本セミナーでは、本事業の国内外の拠点・協力機関の研究者が研究成果を英語で発表されました。研究成果を発表した拠点・協力機関の研究者は、世界銀行本部の教育専門官と、ソウル国立大学、梨花女子大学(韓国)、マケレレ大学(ウガンダ)、東京大学、早稲田大学、上智大学、名古屋大学、大阪大学、広島大学、神戸大学の教員で、上記の大学からの大学院生を含めると計80名を超える研究者が本セミナーに参加し、活発な議論が行われました。
第一部は「ポスト2015の教育課題に関する最近の国際イニシアチブ」をテーマとし、まず広島大学教授の吉田和浩氏が「マスカット合意とポスト2015の教育課題」という題目で発表を行いました。この中で吉田氏は、今年5月に採択されたマスカット合意について概説した上で、その問題点やポスト2015の開発課題中の教育セクターに関する目標の素案との比較について詳しく解説されました。続いて、ソウル国立大学教授のチョン・ボンクン氏と同大学准教授のユ・ソンサン氏が「教育開発に関するポスト2015アジェンダ」と題した発表を行い、来年5月韓国・仁川で開催予定の世界教育フォーラムへ向けた国際的な議論の動向や課題について、ホスト国としての視点を交えた説明を行われました。早稲田大学教授の黒田一雄氏は「公正、質とインクルーシブ教育-ポスト2015の枠組みで政策過程をいかにモニタリングするか-」という題目で、インクルーシブ教育の効果に関する様々な具体的事例を挙げながら、ポスト2015時代のモニタリング手法についての問題を提起する発表を行い、第一部の最後には、東京大学准教授の北村友人氏が「ポスト2015のビジョン追求に向けた分野横断的アプローチ-持続可能な開発目標における教育と水の結びつき-」と題し、「ウォーター・リテラシー」といった言葉に見られる「識字」概念の最新の応用例について紹介されました。
続いて「アセアンにおける国際教育開発」をテーマに行われた第二部では、まず上智大学教授の廣里恭史氏が「アセアン統合と東南アジアにおける労働市場と人的資源の未来に向けた含意-ポスト2015における産業技術教育・職業訓練と高等教育に焦点を当て-」と題し、アセアン地域のこれらの教育サブセクターが地域として抱える課題の是正にむけた具体的な提言をされました。梨花女子大学教授のオウ・ジンファン氏とバン・ヨンファン氏は「援助の氾濫と協調-カンボジアにおける韓国の教育政府開発援助を事例として-」と題し、高等教育開発において援助が氾濫した状態からの「調和化」に向けて実施された様々な取り組みの成功例を紹介されました。神戸大学教授の小川啓一氏とマケレレ大学講師のワカダラ・ジェームズ氏からは、「ミャンマーにおける教員教育の分析-『SABER』の枠組みを用いて-」と題し、世界銀行が教育システムを分析するツールを開発するため推進中のプログラム、SABER(System Assessment and Benchmarking for Education Results)による教員養成政策の比較分析の結果、ミャンマーの事例に関して得られた知見と、分析結果に基づく提言が行われました。
第三部は「高等教育と革新的教育協力」をテーマに行われ、はじめに名古屋大学准教授の米澤彰純氏から「高等教育における国際協力-歴史と将来の展望-」と題した発表がありました。この中で米澤氏は、歴史的経緯や最新の動向を踏まえ、国際協力・開発に高等教育が果たす役割について、主に日本の高等教育を事例とした議論を展開しました。世界銀行本部教育専門官の荘所真理氏からは「ポスト2015の教育課題と世界銀行の教育戦略」と題し、近年の世界銀行による教育セクター援助の動向に関するデータ分析を踏まえ、2020年を目標とする世界銀行の現在の教育セクター戦略と、ポスト2015の教育課題にむけた議論の関係について解説が行われました。広島大学客員教授で元世界銀行本部次長のバーネット・ニコラス氏による発表では、「教育における革新の重要性」という題目で、ワシントンDCを拠点とする国際開発NGO「Result for Development Institute」が行っている、教育開発における革新的取り組みを育てようという先駆的な試みの紹介が行われました。
各部の発表後には、質疑応答の時間が持たれ、国内外から集まった様々な背景をもつ大学院生から多数質問が投げかけられ、講師との間で活発な意見交換がなされました。本セミナーは、様々な立場から国際教育開発の第一線で活躍するアジア、アフリカ、さらに北米の研究者・実務者から、ポスト2015に向けた国際教育開発・協力分野における最新のトピックについて直接学び、議論することのできる大変有意義な機会となりました。
(文責:博士課程後期課程2年 坂上勝基)
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