私は2012年の夏から約一年間、教育コンサルタントとしてUNICEFケニア事務所で働く機会を得ました。仕事内容は、主にリサーチ業務でした。現在UNICEFケニア事務所が力を入れているプロジェクトの妥当性を担保するような証拠として、ケニアの教育事情に関するトピックに沿った定量分析を行うというものでした。

具体的にはOut of School Childrenに関する公式レポートの編集や再分析、ケニアの遊牧生活を営む人々における教育の費用便益分析、そして、Out of School Youthへの支援プロジェクトの費用対効果分析を行いました。その他にも、適宜必要な分析や資料作成があれば、チームのサポートに加わりました。

私自身、ケニアの教育について研究をしており、過去に何度かケニア・ナイロビに滞在経験があったものの、仕事をするために訪れたのは初めての経験で、色々ととまどうことがありました。まず、コンサルタントとして働くということは、アウトプットを出すかどうか、そこでプロとしての能力が問われることになります。長い間学生としての生活に慣れていた自分にとっては、急な環境の変化に対応する以上に、メンタル面での切り替えに苦労しました。また、よく言われるマルチタスクのスキルというのもとても重要なものだと実感しました。自身でワークプランをしっかり立て、同時に様々な仕事を進めていく力は必須です。さらに、分析力というものも実践ではまだまだ使い物になっていないと痛感させられました。統計ソフトを使える、回帰分析ができるということも一つの重要なスキルですが、それ以上に「何が課題であり、どうアプローチしていくのか、その課題に付随するいくつかの解決の為の選択肢は何であるのか」といったような思考力が分析を形づくるうえで非常に大切です。

とにかく必死で体当たりしていくなかで、なかなか思うような結果が出せず、上司をはじめ多くの人に迷惑をかけながらの日々でした。決して手放しで喜べるような成果を出せた訳ではありませんが、かけがえのない経験を積ませていただき、本当に多くのことを学びました。辛抱強く見守ってくださった上司をはじめ、同じ教育セクションのチームの仲間、そして、UNICEFに限らずナイロビのUNのオフィスに集う色々な日本人スタッフをはじめ、多くの仲間がいたからこそなんとか持ちこたえることができたと感謝でいっぱいです。

小川ゼミに来るにあたって、UNICEFで働くというのは一つの目標であり、それが実現できたのは、まさに小川ゼミで日々学んできたことがあったからであると実感しています。まだまだプロフェッショナルとしての実力は足りませんが、だからこそ更なる飛躍を誓い、これまでの経験をバネに挑戦していきたいと思います。