ロンドン大学教育大学院のフェラーリ・テジェンドラ教授のセミナーが開催されました

2015年10月14日(水)に神戸大学大学院国際協力研究科棟1階大会議室にて、開発運営政策セミナー「ヨルダンにおけるシリア難民危機への教育的対応が抱える課題の検証」が開催されました。本セミナーは講師としてロンドン大学教育大学院・上級講師のフェラーリ・テジェンドラ博士をお招きし、危機的状況における教育の課題についてヨルダンのシリア難民を事例に講義していただきました。

まずフェラーリ教授は、危機的状況が教育に与える影響と危機的状況における教育的支援について説明されました。フェラーリ教授によると、危機的状況は多くの生徒を就学困難とし、児童の学習に被害を及ぼします。その反面、教育は危機的状況から児童を守る役割を持っています。また、教育は栄養面や健康面など他の分野への支援を行う上での基盤となりうることから、教育は危機的状況における人道的支援全体の中で重要な役割を担っていることを説明されました。続いて、フェラーリ教授は危機的状況における教育援助の3つのアプローチを紹介されました。フェラーリ教授によると、危機的状況における教育援助には人道的アプローチ、開発アプローチ、人権アプローチの3つのアプローチが存在します。その中でも、フェラーリ教授は人道的アプローチがかつて干渉主義的に西洋諸国の政治的・経済的利益を目的に用いられてきたことを説明されました。

次に、フェラーリ教授はヨルダンのシリア難民の事例をもとに緊急事態における教育の課題を紹介されました。ヨルダンのザータリ難民キャンプに位置する3つの学校を紹介し、そこで起きている混雑した教育環境や教員の質の低さなどの問題について説明されました。また、フェラーリ教授によるとグローバルな経済市場で通用する資格を取得する機会の欠如、やヨルダン市民によるシリア難民への反感の高まりに伴う社会的緊張も問題となっています。ほかにも、フェラーリ教授は危機的状況での難民教育の高等教育や労働市場との接続が円滑でない問題についても言及されました。以上のことを包括し、フェラーリ教授は緊急事態において教育的支援を行う際に生じる問題を提示されました。

実践的情報に富んだセミナーが終了した後、参加者からは主にシリア難民の教育の現状についてより詳しく知ろうと多くの質問が寄せられました。本セミナーは危機的状況における教育の重要性を理解する大変貴重な機会となりました。

(文責: 研究生 徐 珺;
日本語訳: 博士課程前期課程一年 白石 希望)

関連リンク:
http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/event/2015_10_14_01.html