ラオス教育スポーツ省におけるインターンシップ(矢野 泰雅)

2017年9月11日から9月29日までの約3週間、ラオス人民民主共和国の教育スポーツ省の計画局にてインターンシップをさせていただきました。私は、ラオスの初等教育における留年と自動進級制政策に関心があり、進級阻害要因と自動進級制政策の現状について調査を行いました。具体的に以下に挙げる3つの活動を行いました。1点目は教育省職員へのインタビュー、2点目は小学校の校長先生、教員、郡教育局職員への訪問、3点目はUNICEF、JICA、世界銀行、Australian Aidのラオス事務所での調査を実施しました。

Internship at MOES in Lao PDR, 20171点目の活動として、初等教育における留年と自動進級制についてラオス教育スポーツ省内において調査を行いました。具体的な活動としては、基礎教育局副局長の方を紹介していただき、2009年より実施されている自動進級制政策(Progressive Promotion Policy)が策定された経緯や政策の目的、現状についてインタビューを行いました。インタビューを通して、教育スポーツ省による政策策定の過程や導入の目的について理解を深めることができました。また、教育政策の及ぼす影響や、その影響に対する政府による対応方法についての知見を広げることができました。
さらに、基礎教育局や統計局の職員の方々にもお話を伺う機会をいただきました。職員の方より、「政策の実施方法や管理方法に問題があるため、子どもたちにより良い教育を届けることができていない。一刻も早く改善するべき」という指摘をされていました。職員の方々の熱い気持ちや想いに触れ、今後も自動進級制政策の研究に取り組んでいきたいという思いが益々強くなりました。

第2に、首都ビエンチャンの2つの地区(District)にある小学校を6校訪問させていただきました。具体的な活動としては、1年生の生徒の留年の理由や進級を阻害する課題について校長先生、教員、保護者の方々にインタビュー調査をさせていただきました。また、小学校における自動進級制の実施形態や方法についても、校長先生と教員にインタビューさせていただきました。この小学校でのインタビューが私のインターンシップを通して、最も学びの多い貴重な経験となりました。

Intership in Lao PDR, 2017まず、ラオスにおける実地調査の困難な点についてです。小学校を訪問するためには、教育スポーツ省に小学校訪問のための公式文書作成依頼を行い、州の教育事務所が受諾した後、地区への公式文書が作成されます。教育スポーツ省はもちろん州や地区の教育事務所も多くの業務を行っているため、直接説明して理解してもらうために、自らアポイントメントをとり、何度も直接会いに行きました。このように、1つの小学校を訪問することだけだとしても、多くの手続きが必要であることを経験し、ラオスにおいて調査を実施する際の困難さとラオスの文化を学ぶことができました。
また、私はラオス語を話すことができないため、通訳を通して訪問とインタビューを行いました。最初のインタビューでは、4つの質問に60分以上かかり、予定していた調査の3分の1未満に終わりました。言語、文化、思考の差異の影響を知り、現場における調査の難しさについて身を持って理解しました。

ある小学校の校長先生と教員の方は、「自動進級制という言葉を初めて聞いた」とおっしゃっていたり、6つの小学校がそれぞれ異なる方法で生徒の進級と留年を決めていることがわかり、生徒の留年に関わる自動進級制の不安定さが非常に印象的でした。加えて、留年と自動進級制について、校長先生、教員、保護者という多様な視点から、初等教育における問題について知ることができたため、多角的な視点から考察することもできました。

第3に、UNICEF、JICA、世界銀行、Australian Aidのラオス事務所の教育担当の方々にインタビュー調査を行いました。ラオスの教育に約20年携わっている教育担当より、「MDGsが終わり、どの国際機関においても重点がアフリカや南アジアに置かれてしまい、ラオスの初等教育を支援するための資金が不足している。また、国際機関やNGOの活動も少ない。自動進級制の実施を調べてわかるように、政策の実施が都市部ですら弱いラオスでは、まだまだ国際機関などの支援が必要不可欠。」という言葉が非常に印象的でした。ラオスの初等教育における課題についてだけでなく、国際機関の役割や教育担当の方々の仕事について伺うことができ、私自身の将来の目標を考えるとても貴重な機会となりました。

3週間という短い期間でしたが、学校の先生や省関係者の方々や国際機関の方々から、現地で生活されている日本人まで、実際にお話を伺うことができたこの経験を今後のバネと糧にしていきたいと思います。

Internship at MOES in Lao PDR, 2017

最後に、今回のインターンシップをアレンジしてくださった小川啓一教授、ラオス教育スポーツ省でインターンとして受け入れてくださったBounpanh Xaymountry局長、ラオスにおいて様々な面で滞在を支えてくださった教育スポーツ省計画局のAnoupheng Keovongsa氏、JICAラオス事務所の方々、各学校関係者に心より感謝申し上げます。

文責:矢野 泰雅(博士課程前期課程1年)

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