開発運営政策セミナー「ポスト2015に向けた国際教育協力―実地調査に基づく学術的視点から―」

0482014年6月30日に神戸大学大学院国際協力研究科の大会議室にて「ポスト2015に向けた国際教育協力―実地調査に基づく学術的視点から―」をテーマに、開発運営政策セミナーが開催されました。今回のセミナーには講師として大阪大学人間科学研究科の澤村信英教授とウガンダ・マケレレ大学講師のワカダラ・ジェームス氏をお招きして、アフリカと東南アジアでの実地調査の経験をもとに学術的な視点から講演をして頂きました。

澤村教授は「ケニアの伝統的社会における初等教育の長期的インパクトを探る―ポスト2015の議論への示唆―」をテーマにケニア、マサイ族の女性に対して実際に行った定性調査やその調査で得られた結果などについて発表されました。定性調査ならではの個人やコミュニティの変化など、定量調査では得ることができないインパクトを見ることができ、ポスト2015に向けて、さらなる問題点や改善点について再考できるよい機会となりました。また、今年の5月にオマーンのマスカットで行われたばかりのEFA会議で議論された、2030年に向けた新しい取り組みなどについても紹介して頂きました。

061068続いて、本研究科の小川啓一教授が研究代表者として現地調査を中心に行ったミャンマーでの教員養成調査研究について、小川教授によるプロジェクトについての紹介の後、共同研究者の一人であるワカダラ氏が定量分析結果を中心に発表をされました。ミャンマーの教員養成システムの現状についての説明に加え、財政面や運営・管理能力についての問題点やその問題点に対する政策提言を紹介されました。また、共同研究者のウガンダ教育スポーツ省上級政策担当官であり本研究科の博士課程後期に在籍されているオクルト・ジェジェ氏がミャンマーの教員養成大学におけるインフラやICTの重要性などについて具体例を挙げながら分析結果を発表されました。

このセミナーの後に、指定討論者として招かれたアドマコ・ジョゼフ氏 (ガーナ教育省局長)とガゼンベ・チフンド・エヴァンス氏 (マラウィ教育科学技術省教育計画官)からセミナーに対するコメントを頂きました。アドマコ氏は開発途上国における教育開発にはICTが欠かせないとし、教員の待遇向上の必要性についてガーナを他国と比較しながら話されていました。その一方で、ガゼンベ氏は澤村氏のセミナーで紹介されたケニアの女性の中途退学率の事例について指摘されました。ガゼンベ氏によればマラウィでも同様の問題があり、その背景には女性が家族の中で資産として考えられ、娘を嫁がせる代わりに金品を貰うという文化的背景があるため女性に対する教育アクセスの確保は難しいという現状を述べられました。

フロアーからは、ケニアとミャンマーでの研究調査手法に関する質問等がありました。開発途上国における研究において、現地調査の意義や重要性などを第一線で活躍されている研究者からお聞きすることができ、また、開発途上国の教育政策を実践されている実務者の方々のコメントもお聞きすることができ、とても有意義なセミナーとなりました。

(文責:神戸大学国際協力研究科博士前期課程1年 原元 由貴

関連リンク
http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/event/2014_06_30_01.html

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