小川啓一教授とKexin Wang博士による共著論文が『国民経済雑誌』に掲載されました。

小川啓一教授と小川ゼミの修了生であるKexin Wang博士による共著論文 “Household Financing on Secondary Education in Cambodia: An Analysis of Household Over-indebtedness on Public Schooling and Supplementary Tutoring” が、『国民経済雑誌』第225巻第4号(2022年4月)に掲載されました。

近年、カンボジアではマイクロファイナンス市場が急拡大しており、債務超過は優先的に取り組まれるべき課題の1つとなっています。特に家計の債務超過は、子どもの教育へのアクセスに影響を及ぼしているとおり教育課題と深く関わっています。カンボジアの中等・高等教育では、正規の授業時間に加え、補習授業を受講することにより規定のカリキュラム内容を学ぶことが出来るという官民ハイブリッド型の教育制度が近年導入されました。補習授業とは、主に個人が料金を支払うことで提供される学校外教育であり、これにより家計の教育費負担が増加傾向にあります。

本研究は、国立統計局によって2014年に行われた社会経済調査のデータをもとに、家計債務の超過と中等・高等教育における学齢期の子どもの公立学校および補習授業へのアクセスの関連性について分析しています。その結果、社会経済的地位の中位および上位層では家計の債務超過が中等・高等教育への就学および補習授業への参加に負の影響を及ぼしていることが示されました。一方で、社会経済的地位が低い世帯においては、正の関係が確認されました。本研究成果は、カンボジアにおける官民ハイブリット型の中等・高等教育制度下において、家計の債務超過がもたらす影響を考慮した形での、教育へのアクセス拡大と質の保証の重要性を示唆しました。共著者であるKexin Wang博士は神戸大学大学院国際協力研究科博士課程を修了後、世界銀行のコンサルタントとして活躍されています。

文責:杉浦里佳(博士前期課程1年)