石井雄大氏からのメッセージ

私は現在、神戸大学大学院国際協力研究科の特命助教として、人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業「国際協力における価値共創高度人材育成に向けたグローバルネットワーク型共同教育研究プログラム」に携わっております。本事業は、博士後期課程の学生を対象に、本学大学院国際協力研究科および国際文化学研究科が中心となり、海外大学院、国際機関、途上国政府機関と連携しながら、国際協力の第一線で活躍する価値共創型の高度人材を育成することを目的としたものです。私自身、本事業の一修了生として、その一端を教員という立場で担えることに、大きな責任とやりがいを感じております。

振り返りますと、小川ゼミでの経験は、現在の私の研究姿勢や価値観の基盤となっています。数多くの学びの中でも、特に印象深い点を三つ挙げたいと思います。

第一に、「研究を楽しむ」という姿勢です。授業やゼミでの研究発表、博士後期課程における研究報告、学会発表に向けた準備を期限内に進めることは、当然求められます。しかし、それらはあくまで手段であり、目的そのものではありません。小川ゼミでの学びを通じて、私は、研究とは新たな知見を見いだす営みであると同時に、その過程そのものに向き合い続ける営みであることを、アフリカ・マラウイでの調査研究を通じて実感しました。現地では、統計データや既存研究からは捉えきれない家族関係や慣習、価値観に直面し、自分の前提が揺さぶられる経験を重ねました。そうした未知の現実に向き合い、自らの理解を更新していくプロセスこそが研究の醍醐味であり、その積み重ねが現在の研究活動の基盤となっています。

第二に、「切磋琢磨できる仲間の存在」です。研究も仕事も、決して一人で完結するものではありません。共に議論し、悩み、励まし合える仲間の存在は欠かせません。小川ゼミには、縦と横のつながりが豊富で、互いに学び合える恵まれた環境があります。私自身、同期の宇野さんをはじめとするゼミの仲間と日々議論を重ねる中で、多くの気づきを得るとともに、自身の視野を広げることができました。互いに刺激し合いながら成長できる環境は、物事を継続していく上で大きな支えであったと感じています。

第三に、「他者と過度に比較しない」という姿勢です。小川ゼミには、途上国での経験が豊富な方や、政府機関ですでに活躍されている留学生など、さまざまな背景をもつ素晴らしい方々が集っています。一方、そのような環境の中では、他者と自分を比べ、優劣を意識してしまうこともあります。私自身も、当初はそのような思いを抱くことがありました。しかし、小川ゼミでの経験を通じて本当に重要だと感じたのは、他者ではなく、過去の自分と現在の自分を比べ、どれだけ成長できたかを見つめる視点でした。この視点を持つことで、日々の小さな進歩にも意味を見いだすことができ、前向きに歩み続けることができました。5年前に入学した当時には想像もできなかった現在の自分があるのは、そうした日々の積み重ねの結果であると実感しています。

末筆ながら、これまで温かく、そして常に的確なご指導を賜りました小川啓一教授に、心より御礼申し上げます。研究の進め方のみならず、人としての在り方についても多くの学びをいただきましたことに、深く感謝しております。また、復旦大学でのダブルディグリー、ラオスでの短期研修、ユニセフやマラウイ大学でのインターンシップ、マラウイでの高度海外研究、International Education Development Forum (IEDF)や世界銀行姫路フォーラムでの学生コーディネーター、グローバルネットワークプログラムへの参加など、数多くの貴重な機会をいただきましたことにも、重ねて御礼申し上げます。さらに、日々多くの刺激と学びを与えてくれたゼミ生の皆様にも、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

最後に、これから本研究科に進学を検討されている方々へ。大学院生活は、研究に取り組むだけでなく、自分自身と向き合い、将来の方向性を模索する貴重な時間でもあります。時には悩み、立ち止まることもあるかもしれません。しかし、指導教員や仲間との関わりの中で、新たな視点や可能性が開けていくはずです。日々の積み重ねの中で得られる経験や出会いは、必ず皆様の糧になります。ぜひ、自らの関心を大切にしながら、一歩を踏み出していただければと思います。

神戸大学特命助教
石井雄大