GSICS教育系ゼミの教員による共著論文が『国際協力論集』に掲載されました
このほど、神戸大学大学院国際協力研究科(GSICS)で教育系...
2025年12月12日から2026年3月20日にかけて、Danilo Leite Dalmon博士のご指導のもと、ブラジルの高等中等教育改革に関する研究インターンシップを実施しました。本インターンシップでは、ブラジルにおける高等中等教育改革、特に全日制高等中等教育の拡大と学校レベルのBasic Education Development Index data (IDEB) 成績との関係に焦点を当て、量的分析を行いました。本インターンシップの主な目的は、量的分析の実践的なスキルを向上させるとともに、ブラジルの教育制度が直面する現状や構造的課題について理解を深めることでした。具体的には、全日制教育の導入が学校レベルの教育成果の改善と関連しているかどうかを検討しました。
Danilo博士のご指導のもと、ブラジルの州立高等中等学校を対象に、学校レベルのIDEBデータおよびCenso Escolar(ブラジルの全国学校センサス)の行政データを用いた実証分析に取り組みました。分析対象期間は2017年から2019年であり、これは2017年に開始されたブラジル高等中等教育改革の初期段階にあたります。同改革は、カリキュラムの多様化、コンピテンシーに基づく学習の強化、全日制教育の拡大を通じて、高等中等教育の妥当性と効率性を向上させることを目的としていました。
本インターンシップの中心的な活動は、分析用データセットの構築と量的研究デザインの実施でした。IDEBデータとCenso Escolarデータを組み合わせ、2017年から2019年の間に新たに全日制高等中等教育を導入した学校を特定しました。また、両年において観測可能な州立高等中等学校から成るバランス・パネルデータを構築しました。この過程を通じて、サンプル選定、処置群の定義、データクリーニングの判断が、実証分析の解釈や分析結果の信頼性と密接に関わっていることを学びました。
全日制教育の導入と学校パフォーマンスの関係を検討するため、2017年および2019年の学校レベルデータを用いて、差の差分析の手法を適用しました。この分析により、新たに全日制高等中等教育を導入した学校と、同期間に導入しなかった学校との間で、IDEBスコアの変化を比較しました。
分析結果からは、全日制教育の導入と学校レベルのスコアの改善との間に、限定的ではあるものの正の関連が示唆されました。一方で、本分析を通じて、量的分析の結果は、研究デザイン、データ上の制約、そしてより広い政策的文脈を踏まえて慎重に解釈する必要があることを学びました。特に、統計的に有意な結果が必ずしも大きな実践的・政策的意義を意味するわけではないという点を理解することができました。
今回のインターンシップは、理論的知識と実証的な政策分析を結びつけるうえで、非常に有意義な機会となりました。データセットの構築、計量分析手法の適用、回帰分析結果の解釈、量的研究の限界に対する批判的検討など、教育政策研究に必要な基礎的能力を高めることができました。さらに、実証的エビデンスが、教育改革、教育格差、学習成果に関する政策的議論にどのように貢献し得るのかについて理解を深めることができました。
最後に、本インターンシップを通じて、研究デザイン、データ分析、政策的解釈に関して丁寧にご指導くださいましたDanilo博士に心より感謝申し上げます。また、日頃より研究活動をご指導くださっている小川啓一教授に改めて深く御礼申し上げます。先生方の継続的なご指導とご支援は、修士課程の学生として、また教育研究者を目指す者としての私の成長にとって大変貴重なものとなりました。
文責:田中 ひなた (博士前期課程)