FHI360でのインターンシップ報告(宇原 英美)
2013年10月19日から12月3日までの約6週間、アメリカ...
この度、将来の小川ゼミ生に向けてのメッセージの依頼を受けまして、一言書かせていただきます、野村真作と申します。2014年7月現在、世界銀行の教育局にて、教育エコノミストというポジションで仕事をしております。2004年12月にGSICSの修士1年生のときにコンサルタントとして入行して以来、中東地域、南アジア地域で勤務し(2009年から2011年はユネスコ統計局勤務)、イエメンとバングラデシュを中心に教育のプロジェクトに関わってきました。
GSICSで経済学の修士号・博士号を取得したので、もともと学部でも経済学を勉強してたのかと聞かれますが、実は、GSICSにきて初めて経済学を学びました。GSICSに入学したときは、開発の仕事をしたいと思っていても具体的にどうすればいいのか検討もつかず、世界銀行という選択肢を知ったのも、小川ゼミに来てから・・・といった具合でした。私の場合、運がよかったのは、たまたま世界銀行で働いていた小川先生が、ちょうどその年に赴任してきたこと・・・でしょうか。
GSICSで基本的な理論や開発の潮流を学ぶ中、ゼミに来て一番の転機となったのは、M1の夏に参加したレソトでの研修でした。小川先生の2週間のミッションに同行して、教育セクターレポートのデータ収集のためにレソトに行きました。そこで、現場でのカウンターパートとの交渉の仕方や、どういうデータをどういう風に集めるのかという実務を体験しました。そして、その後実際に収集したデータを使って、GSICSで学んだ理論と現場の状況を融合させながら、試行錯誤でセクターレポートの分析をしていく中で、いつの間にか生きたスキルが身についていったと思います。その数ヶ月後、運よくたまたまイエメンで中等教育のセクターレビューを行うというコンサルタントの機会をいただき、まさにその時学んだことが実践できました。修士1年のときからイエメンに赴任したので、実際に小川ゼミに座って参加していたのはかなり限られているわけですが、修士、博士の期間を通して、学んだことを2つ挙げると、開発の分野における実務の遂行能力と、理論と現場の融合する感覚、この二つが小川ゼミを通して磨かせてもらったスキルかと思います。「知識を習得する」ではなく、「能力を高める」、もしくは、「開発の実務技能を修得する」という、そんな経験をした大学院生活だったと思います。
私がゼミに在籍していたときも、おそらく今も、小川ゼミのひとつの大きな特色は、いろんな機会があるということだと思います。一般的に世界銀行のミッションに学生として参加することはめったにないことでしょうし、そもそもそういうチャンネルがないわけですから、望んでもそうそう得られるものではありません。知識を身につけることは、自宅でもできること。でも、開発の分野での本当の技術・能力を身につけるには、自分の意欲と知識はだけでは不十分で、機会と経験が必要なのではないかなと思います。もちろんそういった貴重な機会を生かすかどうかは自分次第ですが、即戦力を求める世界銀行で人を採用する側に立った今、現場や実務の経験のまったくない人は(一般的に)少し何か足りない気がします。
開発の仕事をやりたいと大学院を目指す方は、熱意にあふれた方が多いと思います。ただ、開発の分野も熱意のみでなく、何ができるかというスキルがものをいう世界です。大学院を通して、ぜひ熱意と高い能力の両輪を兼ね備えた人が、開発の現場に来てくれることを楽しみにしています。
2014年7月
世界銀行教育局
教育エコノミスト
野村真作