2013年3月10日から3月20日までの1週間半、米国・ルイジアナ州ニューオーリンズとワシントンDCにおいて実施された海外実習「人的資源開発に関する最先端の研究と実践の調査」に参加させていただきました。以下、その報告をさせていただきます。

前半の一週間はルイジアナ州ニューオーリンズにあるホテル、ヒルトン・ニューオーリンズ・リバーサイドで開催された比較国際教育学会(Comparative and International Education Society: CIES)の第57回国際大会に参加しました。大会期間中は第一線で活躍されている研究者や実務者の発表を聞くことで、比較国際教育学や国際教育開発論に関する最新の研究の動向を掴むことを目的に、積極的に様々なセッションやワークショップ参加し、発表者に質問しディスカッションに参加することを心がけました。まず大会初日の3月10日に行われたワークショップ、「Introduction to the Concepts of Complex Sampling in Large-Scale Assessments in Education」に参加し、国際学力テストのTIMSSやPIRLSを実施していることで有名な国際教育達成度評価学会(The International Association for the Evaluation of Educational Achievement: IEA)から来られた講師から、適切なサンプリング方法等についての指導をうけることができました。また報告者が専門とする経済学的アプローチからの研究発表のセッションや、アフリカ研究者によるセッションに多く参加していく中で、研究手法やフィールドが同じ、ハーバード大学やコロンビア大学、スタンフォード大学といった海外の大学院生の発表を聞き、直接交流することもできました。そして、普段先行研究として引用している学術論文の著者による発表を聞き、セッション後に直接様々なお話しを聞くことができたことは大きな喜びでした。さらに、大会中盤の3月13日には、ウガンダの教育に関するセッションにおいて「An Analysis of Regional Equity in the Ugandan Primary School Pupil’s Learning Achievement」という題目で、自らの修士論文の研究成果発表を行い、ウガンダの教育研究者や、アフリカの教育開発に関わる実務家の方々から多くの貴重なコメントをいただき、ネットワークを築くことができたことは、大変大きな収穫でした。

実習の後半はワシントンDCへ移動し、教育開発援助の最先端の現場の状況や、世界銀行をはじめとする国際機関で今まさにどのような人材が求められているかを理解することを目標に、世界銀行本部で本実習のために用意されたセミナーやミーティングに参加させていただきました。世界銀行本部では、3月18日に元世界銀行本部東アジア太平洋地域局教育セクター課長のEduardo Velez Bustillo氏によるセミナーが行われ、東アジアにとどまらず、中南米やアフリカなど様々な地域の開発に携わって来られた経験を交えた講演をしていただきました。3月20日には人間開発ネットワーク(Human Development Network, Education: HDNED)主催でリード教育エコノミストのHarry Anthony Patrinos氏、リードエコノミストのHalsey Rogers氏、国際協力機構人間開発部基礎教育第二課でHDNEDに出向中の澁谷和朗氏によるセミナーが行われ、Patrinos氏からは『世界開発報告2013』のバックグラウンド・ペーパーともなっている同氏の最新の教育収益率分析結果についての報告が、Rogers氏からは世界銀行の「Education Strategy 2020」の背景や概要についての報告が行われました。また、昨年お会いした南アジア地域総局、人間開発局のシニアエコノミストであられるLeopold Remi Sarr 氏や、世界銀行の上級アドバイザーなどを歴任されたVinay Bhargava氏と再びお話しをできるミーティングの時間を持つこともできました。さらに、小川ゼミOBで現在は、世界銀行本部で教育エコノミストとしてご活躍中の野村真作氏から、直接国際公務員としてのご経験等についてお話しを伺い、ちょうど開催中だった世界銀行独立評価グループ(Independent Evaluation Group: IEG)による「Evaluation Week 2013」のイベントの一部にも参加することができました。

今回2回目の実習参加でしたが、英語でのプレゼンテーションスキルや、ディスカッション能力の面で前回時と比べ向上が感じられた一方、自らをアピールし売り込んでいく貪欲さや積極性、交渉力、コミュニケーション力の重要性に改めて気付かされる場面もたくさんありました。また、博士課程後期への進学が決定している報告者にとって、人的資源開発に関する最先端の研究や実践の状況に触れ、博士論文のテーマを絞り込んでいく際の材料を得、さらにネットワーキングを行うことができたことは大変大きな成果でした。

最後になりますが、貴重な時間を割いて、セミナーやミーティングにご参加いただいた世界銀行本部の方々、研修プログラムをコーディネート、サポートして下さった野村真作氏、荘所真理氏、そして、このような素晴らしい機会を提供してくださった指導教官の小川啓一教授に深く感謝申し上げたいと思います。