トロント・ワシントンDC海外実習報告 (坂上 勝基)

2014年3月9日~22日までの2週間、トロントとワシントンDCでの海外実習に参加させていただきました。実習全体のテーマに加え、国際学会への参加や第一線で活躍する専門家へのインタビュー等を通じ、ウガンダの初等教育に関する博士論文執筆に必要な情報を収集するという目的を持って、実習の様々な活動に取り組みました。

実習の前半は、3月10日~15日にカナダ・トロントで開催された比較国際教育学会(Comparative & International Education Society: CIES)の第58回年次総会に参加しました。今回の総会では博士課程の院生向けワークショップに参加し、「Economics of Education」というグループで「Examining the Determinants in School Enrollment of Children from Rural Households under Universal Primary Education Policy in Uganda」という題名の研究計画を発表しました。本活動を通じ、研究計画高度化に有益な多くのコメントを、同グループの2名の教授と院生からいただくことができました。

ワークショップ参加に加え、「A Counterfactual Decomposition Analysis of Regional Differences in Learning Achievement: The Case of Primary Education in Uganda」という題名の研究成果の口頭発表も、「Schooling and the Community」というセッションで行いました。さらに最先端の研究の動向を知り、研究者・実務者の間にネットワークを構築するため、自身の専門分野に関連する様々なセッションに参加しました。今回の総会のテーマが「Revisioning Education for All」であったため、自身の研究と関連したセッションが多く開催されていたことが印象的でした。また昨年12月までの高度海外研究期間中、客員院生研究員として在籍していたピッツバーグ大学国際教育研究所(Institute for International Studies in Education: IISE)主催のレセプションに参加し、ピッツバーグ大学在籍時代のネットワーク維持のための有益な機会を得ることができました。

実習の後半は、ワシントンDCにある世界銀行本部を訪問し、ウガンダにおける教育開発プロジェクトに関わる専門家へのインタビューを実施しました。この中でまず、ウガンダのタスクチーム・リーダーでリード教育エコノミストのAndreas Blom氏へのインタビューを通じ、「Global Partnership for Education Teacher and School Effectiveness Project in Uganda」の進捗状況等について学ぶことが出来ました。同インタビューでは、ウガンダの中等教育普遍化政策下における教育の質保証にむけた革新的アプローチのインパクト評価の暫定的成果を聞くこともできました。

さらに、世界銀行「Development Research Group」の「Living Standards Measurement Study-Integrated Surveys on Agriculture」チームのエコノミストの一人で、「Uganda National Panel Survey」実施担当者へのインタビューを行いました。博士論文の分析で報告者はこの調査のデータを現在使用していることから、データ収集の現状や、どのような分析が既になされ、現在なされているのかに関する大変貴重な情報を、本活動を通して得ることが出来ました。
さらに、ワシントンDCで国際教育開発分野の第一線で活躍される研究者・実務者へのインタビューを通して、研究・プロジェクトの最新の動向に関する多くの情報を収集することができました。具体的には、ジョージ・ワシントン大学のJames H. Williams准教授や、世界銀行の教育セクターマネージャーのHarry Anthony Patrinos博士、リードエコノミストのHalsey Rogers博士らとの会合に参加することができました。また、神戸大学客員教授であられたMark Ginsburgh博士やEduardo Vélez Bustillo博士、Robert Prouty博士、さらには昨年夏のインターンシップ期間中、客員研究員として在籍していたFHI360のスタッフと再会し、ネットワークを強化することが出来たことも大変有益でした。

今回の海外実習を通じ、国際教育開発分野の最新の動向に加え、博士論文高度化に役立つ多くの知見や貴重な情報を得ることが出来ました。そして、北米における貴重なネットワークの形成・維持、さらには報告者の将来の研究やキャリア形成のための基盤形成に役立てることが出来たと考えています。

末筆になりますが、このような素晴らしい機会を提供してくださった指導教官の小川啓一教授、実習の会合のアレンジをはじめ、公私にわたる様々な面で暖かな支援をしてくださった小川研究室修了生の先輩方、野村真作博士、荘所真理博士、田中伸幸博士、野村美穂氏に心からの謝意を表したいと思います。

博士課程後期課程1年
坂上 勝基