「世界銀行の視点から見るガボンの教育システムの分析:GEPD(グローバル教育政策ダッシュボード)を用いたSDGsとの整合性」(世界銀行教育エコノミスト Bernard Yungu Loleka博士)

2024年11月30日、世界銀行の教育エコノミストであるBernard Yungu Loleka博士が、「世界銀行の視点から見るガボンの教育システムの分析:グローバル教育政策ダッシュボード(Global Education Policy Dashboard: 以下、GEPD)を用いたSDGsとの整合性」という題目でオンライン特別講義を行いました。Bernard博士は、小川啓一教授の指導のもと、修士号および学士号を本研究科で取得しました。本講義で紹介されたGEPDの目的は、ガボンの教育システムにおける学習成果の主要な要因を測定・特定することであり、教育の4つの重要な側面として、(1)供給とインフラ、(2)学校経営、(3)生徒、(4)教育の質が強調されました。

 データ収集にあたり、世界銀行はガボン国内のおよそ200の小学校を対象に調査を実施し、学校長、教員、生徒を調査対象としました。その結果、教員の約10%のみが担当教科に関する十分な知識を有している一方、60%の教員は自身の指導スキルに満足していると感じていることが明らかになりました。一方で喫緊の課題として、教員のリーダーシップ不足や生徒の学習準備不足が指摘され、これらの改善が不可欠であることも示されました。さらに、都市部と農村部、私立学校と公立学校の間に存在する格差も浮き彫りになりました。具体的には、都市部の学校は教員の出席率、学校経営、供給およびインフラ面で優れている一方、農村部の学校は大きく遅れています。また、私立学校は学習達成度が大幅に高いのに対し、公立学校では教員の教育スキル不足や供給・インフラの欠如が学習達成度の低さに影響していることが示されました。ガボンは中所得国であるにもかかわらず、こうした格差が教育の公平な成果達成を妨げる障壁となっていることが示されました。

 政策指標に関しては、評価・モニタリングおよび説明責任の欠如が依然として課題であることが指摘されました。特に、学校資源の標準化の欠如が深刻であり、政治・官僚的能力指標からは国家政策が教育の質に与える影響が明確に示されました。一方でBernard博士は、ガボンの教育システムを他のアフリカ諸国と比較し、ガボンが多くの国よりも良好な成果を示しているものの、依然として改善の余地があると指摘しました。講義を通じて、世界銀行がGEPDのようなツールを用いて教育システムをグローバルに分析・改善する手法が示され、貴重な知見が提供されました。

 講義の最後には質疑応答が行われ、Bernard博士は一つ一つの質問に丁寧に回答しました。また、国際機関でのキャリアを目指す学生たちに自身の経験を共有し、励ましの言葉を送りました。ご多忙の中ご講演をいただいたBernard博士、そして本セミナーの機会を設けてくださった小川啓一教授に、心より感謝申し上げます。

文責:石井雄大(博士後期課程)