株式会社パデコにおけるJICAインターンシップ報告(岡本京子)

私は、2024年11月3日から12月21日の約2ヶ月間、エジプト・カイロにて、株式会社パデコにおける独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency、以下「JICA」)インターンシッププログラムに参加しました。以下、その報告をさせていただきます。

私は、JICAインターン(開発コンサルティング企業受入)として株式会社パデコに配属され、政府開発援助(Official Development Assistance、以下「ODA」)案件である「エジプト国特別活動を中心とした日本式教育モデル発展・普及プロジェクト」に携わりました。本ODA案件は、日本の教育から特別活動や、学校運営・学級経営方法、遊びを通じた学びなどの活動を取り入れ、全人的教育モデルを普及し、持続的に実施していくための体制強化及び仕組みづくりを支援するものです。インターンとして、具体的には以下の業務に従事しました。

まず、プロジェクトの中間評価に向けた質問紙調査に関わり、調査の準備・実施・データ入力の業務補助を行いました。調査の補助で訪問した公立学校では、中等教育課程においても識字ができない子が数人おり、教育格差の現実を目の当たりにしました。また、データ入力を複数人で進める中で、学校・クラス・調査対象ごとのチェックリストを作成・共有するなど進捗管理を円滑に行うことができるよう尽力しました。

次に、カイロ市内およびその周辺地域の学校6校を訪問し、学級会、児童会、Special Needs Day、カイロ日本人学校との研究授業など、さまざまな教育活動を観察しました。これらの訪問を通して、エジプト日本学校(EJS)の特別活動が生徒の主体性や協調性、責任感を育む効果を実感しました。特に、授業中には、生徒たちは積極的に発言し、司会者や先生に指されるまで順番を待つ姿勢が見られた一方、議論の場では、自分の意見を述べるだけでなく、他者の意見を受け入れた上で妥協案を提案する場面もあり、特別活動が生徒たちに良い影響を与えていることが伺えました。こうした中、EJSの課題として学校教育における教師の質改善の難しさを強く感じました。例えば、教師が結果を重視し、生徒のプロセスを軽視する場面や、他者の意見を取り入れない姿勢が見受けられたことから、教育現場での柔軟性と他者の意見を取り入れる姿勢の重要性を再認識しました。

そして、さまざまなテーマの会議へ参加する機会もいただきました。この業務では、前提知識が少ない中で、議論の根幹を素早く理解し、正確かつ簡潔に記録する能力が求められました。また、本会議における日本人の方々を観察する中で、文化的背景が異なる他者との議論に直面した際には、相手の文化や慣習、議論スタイルの傾向を理解することが、合意形成には不可欠であると強く感じました。さらに、キャリア教育のカリキュラム作成に関する議論では、日本の教科書の内容をそのまま移すのではなく、エジプト社会の文脈に合わせて改訂する必要性を認識しました。その中で、妥協することなくエジプトの子どもたちの視点を取り入れながら、カリキュラム改定に取り組むエジプト人スタッフの姿勢に深く感銘を受けました。

最後に、プロジェクトの広報活動として、ニュースレターの記事作成に携わりました。記事では、委員会の活躍をテーマに、Special Needs Dayと児童会の事例を取り上げました。情報整理をしながらも、いかにして読者に分かりやすく伝えるのかというスキルを磨くこともできました。

本インターンシップを通じて、私は非常に貴重かつ多様な学びを得ました。その中でも特に重要だと感じたのは以下の3点です。まず、ソフトスキルの重要性です。異文化環境でのプロジェクトでは、技術的なスキルに加え、相手の文化や価値観を尊重する姿勢、そして積極的な意思疎通を通じた信頼関係の構築が不可欠であると実感しました。特に、エジプトの教育関係者との対話では、彼らの教育観や文化的背景を理解しながら意見交換を進めることがプロジェクトの成功につながる重要な要素であると学びました。次に、現地観察の重要性です。現地の学校を訪問し、授業の様子や生徒・教師の姿を直接目にすることで、文献やデータでは得られない貴重な情報を得ることができました。また、教師や生徒が抱える課題は、彼らの言葉だけでなく、行動や表情からも読み取れることを実感しました。こうした「現場での気づき」を得るためには、観察力と現場経験が欠かせないものであり、その重要性を改めて強く認識しました。そして、他者から学ぶ姿勢の重要性です。教育現場での豊富な経験を持つコンサルタントの方々から、授業観察の視点や評価の方法について多くの助言をいただきました。文献だけでは得ることができない実践的な知識を学ぶことができ、他者の経験や専門性から学ぶ姿勢の重要性を再認識しました。この姿勢を今後も大切にし、自身の成長につなげていきたいと考えています。

さらに、今回のインターンシップを通じて、エジプトの教育現場が抱える課題と日本式教育の導入がもたらす可能性についても深く理解することができました。日本式教育の導入により、エジプトの子どもたちの積極性や他者への思いやりという強みを強化し、さらに他の力を伸ばすことが期待できると考えています。このような教育を受けた子どもたちがどのような未来のエジプト社会を築いていくのか、とても楽しみです。

この経験と多くの熱意あふれる方々との出会いを通じて、私は中東・北アフリカ地域における脆弱な立場にある子どもたちの教育や福祉に携わる仕事に就きたいという思いがより一層明確になりました。さらにその際には、現場の声を拾い上げ、現場に根差したプロジェクト遂行の実現を目指したいと考えています。この目標を達成するために、今後私はアラビア語とイスラーム文化の学習、教育に関する専門性の向上、そして関連分野への学びの深化に努め、学問と実践の両面で努力を重ねていく所存です。

末筆になりますが、このような素晴らしい機会を下さったJICAの皆様、JICAエジプト事務所の皆様、プロジェクトチームに温かく迎えてくださった株式会社パデコの皆様、プロジェクトマネジメントユニットの皆様、インターンシップの応募から参加に至るまでご支援いただいた小川啓一教授、インターン期間中もオンラインにてご指導くださった桜井愛子教授、近田正博教授、葛城浩一准教授、さまざまな相談に乗ってくださった神戸大学大学院国際協力研究科教務係の皆様や小川ゼミの先輩方、そしてエジプトでお世話になりました全ての方々に心より感謝申し上げます。

文責:岡本京子(博士前期課程1年)