JSPS第1回セミナー「開発途上国における教育政策の展望」

2014年5月2日(金)、国際協力研究科棟1階大会議室にて、神戸大学大学院国際協力研究科が中核となり実施している「日本学術振興会研究拠点形成事業(アジア・アフリカ学術基盤形成型、研究交流課題名:アジア・アフリカにおける教育行財政研究と持続的な若手研究者の育成)」の第1回のセミナーが開催されました。本セミナーは、「開発途上国における教育政策の展望-国際教育協力の視点から-」をテーマとし、50名超の研究者(大学院生を含む)が参加しました。講師として、世界銀行本部人間開発部次長のパトリノス・ハリー氏(Dr. Harry Patrinos)、ソウル国立大学名誉教授で神戸大学大学院国際協力研究科客員教授の金基奭 (Dr. Ki-Seok Kim)氏、ソウル国立大学国際関係ODA研究所研究員の李基奭氏 (Dr. Ki-Seok Lee)、マケレレ大学統計計画学部講師のウォカダラ・ジェームス氏(Dr. James Wokadara)の代理として、ウガンダ教育スポーツ省の上級教育計画官のオクルト・ジェジェ・モゼス氏(Mr. Jeje Moses Okurut)を迎え、英語での発表、並びに議論が行われました。

DSC_0141講師陣による発表に先立ち、プロジェクトコーディネーターである本研究科の小川啓一教授から、プロジェクトの目標や実施体制について説明が行われました。第一部では、「教育ベンチマーキングを基にした比較政策分析」をテーマに、まずパトリノス氏が発表を行いました。世界銀行が教育システムを分析するツールを開発するために、推進中のプログラム、SABER(System Assessment and Benchmarking for Education Results)の概要と、実際に本ベンチマーキングによる比較政策分析が活用された事例やSABERの今後の展望について、紹介して頂きました。続いて小川教授が、SABERによる教員養成政策の比較分析の結果、ミャンマーの事例に関して得られた知見と、分析結果に基づく提言について発表しました。質疑応答では、SABERの運用実態や、教員養成政策をベンチマークする際の課題、他国への応用事例等に関して、多数の質問が寄せられました。

第二部は「ポストEFAにおける国際教育協力」をテーマにパネルディスカッションが行われました。まず李氏が、教育開発分野における2015年以降の新たな目標設定を行うため、2015年に韓国・仁川で開催される世界教育フォーラム(World Education Forum)に向けた議論の進捗状況について報告を行いました。続いて金氏が、韓国の教育発展経験や、教育NGO、EWB(Educators without Borders)を通じたブルキナ・ファソにおける生涯学習支援の経験に基づき、ボトムアップ型アプローチやノンフォーマル教育の力に注目した「ポストEFAの国際教育協力の新たな可能性」について発表を行いました。更に、オクルト氏は、最も開発の遅れが指摘されるサブ・サハラアフリカのEFA目標達成に向けた進捗状況や、これまでの取り組みのレビューに基づき、ポストEFAで重要となる教育開発アジェンダについて発表しました。最後にパトリノス氏が、世界銀行等の国際機関で行われているポストEFAの目標設定に関する議論の最新状況や、SABERが果たしうる役割について発表を行いました。その後の質疑応答では、EFAの各目標に対する具体的達成状況や、ポストEFAにおいて新しいアジェンダが重要視されている背景等に関する様々な質問が寄せられ、4名の講師は丁寧に応えて下さいました。

第一部、第二部ともに、発表後には講師と参加者との間で活発な意見交換がなされました。本セミナーは、様々な立場から国際教育開発の第一線で活躍するアジア、アフリカ、さらに北米の研究者・実務者から、教育行財政研究において最も注目が集まるトピックの最新の研究成果や事例について学ぶことのできる大変有意義な機会となりました。

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