世界銀行と持続可能な開発目標「国際教育構造は修復可能か」(Nicholas Burnett博士)

2021年12月28日、世界銀行セクターマネジャー、ユネスコ本部事務局次長をこれまで務められたNicholas Burnett博士を招聘し、「国際教育構造は修復可能か」をテーマとした講義が行われた。Burnett博士は、「全ての人々が教育を受けるべきである」という目標から生まれた教育構造に関する議論を中心に、1960年以降多くの国で普遍的初等教育が達成されたが2030年までに全ての国で達成することは難しく、教育に関する持続可能な開発目標4も同様に達成することは難しいであろうと述べました。

このような現状を踏まえて、Burnett博士は、国際教育構造を構成する世界銀行、ユネスコ、ユニセフといった国際機関や、二カ国間援助機関、他国間援助機関、財団などが果たすべき役割について、(1)リーダーシップ、(2)規範と基準、(3)技術的・知識的支援、(4)モニタリング、(5)アカウンタビリティ、(6)財政の6つの機能に焦点を当てながら2019年と2021年に実施した調査結果を用いて説明しました。Burnett博士は、分析結果に基づいて、リーダシップとアカウンタビリティが十分ではなく、更なる努力の必要性を指摘した一方で、規範と基準、モニタリング、技術的・知識的支援、財政の機能については高く評価しました。

さらに、Burnett博士は、現在の国際教育構造が、開発途上国や民間セクターの声に耳を傾けていないことや、特にサブサハラアフリカといった国々において、国家制度を自律的に発展させる能力を支援するような体制を構築することができなかった点を課題として指摘しました。新型コロナウイルスの流行により世界中で甚大な学習機会の損失を経験したことで、国際教育構造の改革に更なる遅れが生じていることを問題として挙げました。Burnett博士はユネスコが著しく力を弱めていることに危機感を抱きつつ、ユネスコからの教育セクターの独立と新しい機関の設立といった提案や、教育のためのグローバルパートナーシップへの拠出を増加し、特にアフリカにおける財政的・技術的・知識的な支援にコミットメントの必要性を強調し、講演を締めくくりました。

本講演ではBurnett博士の講義及び学生との議論を通して、国際教育構造についての理解を深める貴重な機会となりました。

文責:宇野 耕平 (博士前期課程1年)

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