韓国・ソウル国立大学で開催された国際会議「The 14th International Conference on Education Research: Future Education Design for All」において小川啓一先生・ゼミ生が研究論文を発表しました
2013年10月16日(水)から18日(金)にかけて、韓国・...
2024年5月9日、国際協力研究科にて国際ハイブリッドシンポジウム「Exploring the Global Reform Scripts of Development Partners: Comparative Retrospective Analyses」を開催しました。本シンポジウムは、神戸大学とコロンビア大学ティーチャーズカレッジ、KIX EMAP Hub、ジュネーブ大学院大学およびユネスコチェアの共催で、多くの大学・政府機関による協賛の下で実現しました。Zoomの機能を活用したアラビア語、ロシア語、クメール語による同時通訳もあり、世界中から約330名もの参加者が集まりました。
冒頭には、小川啓一教授から主催を代表して挨拶がされました。神戸大学が長年実施してきたJICAトレーニングやイエメンでの教育プロジェクトを振り返り、教育移転や自律的な学校運営の実践に携わってきた経験が、本シンポジウムに結び付いているとお話されました。また、共催のKIX EMAP Hubを代表して、Alushi Terway博士(シニアアドバイザー)からは参加者と協賛の多くの大学・政府機関への感謝が述べられました。
キーノートプレゼンテーションでは、トロント大学の木島理江准教授が世界の教育政策・改革の動向を収集した「World Education Reform Database(WERD)」について紹介されました。WERDは、スタンフォード大学とトロント大学の研究チームによって収集された大規模な取組みであり、1960年代以降を中心に、190か国以上で実施されてきた10,000以上の教育政策・改革に関する情報が含まれています。既に研究チームではWERDを用いた研究が多面的に進められており、それらの研究成果および今後の活用の展望が紹介されました。
続いて、コロンビア大学ティーチャーズカレッジのSteiner-Khamsi教授は教育改革を歴史的な視点から概観し、システム思考から教育改革を紐解く視座を提供くださりました。具体例として、1990年頃から世界的に広がった「School Autonomy with Accountability (SAWA)」の改革に注目し、グローバルな教育改革の潮流の中での位置付けを確認しました。さらに、WERDを活用することで実証的に潮流を検証する方向性を示し、教育政策研究の発展に向けて新たな可能性を示唆しました。
その後、高名な研究者・実務家をお招きし、パネルディスカッションの時間を持ちました。国際連合大学サステイナビリティ高等研究所の所長を務める山口しのぶ教授は、現在のlearning crisisやESDなどの課題に対面する上で、地方政府による改革が持つ役割を強調し、教育政策研究の観点からWERDの取組みへの期待を述べられました。対して、早稲田大学の黒田一雄教授はグローバルガバナンスの観点から教育における世界的潮流を紐解いたうえで、データによって潮流を改めて検証することへの高い関心を示しました。
カンボジア教育青年スポーツ省のSam Sideth Dy博士は、ジョムティエン会議に始まる教育改革の歴史と潮流が語られました。また、国際機関を代表して世界銀行からはHarry Patrinos博士は、改めて教育の重要性と世界的な取り組みを振り返ったうえで、最終的な学習成果に結びつけるためのガバナンスとアカウンタビリティに目を向けられました。これらを実現するために、システム思考とリンクさせたプロジェクトと評価の役割を強調するとともに、グローバルおよびナショナルレベルでデータを収集し、検証していくことの意義を強調しました。
質疑応答では大学院生・研究者から多くの質問が上がり、活発な議論が展開され、非常に有意義なシンポジウムとなりました。また、本シンポジウムは、将来的に日本と海外の大学や政府機関、国際機関が協働して教育政策研究を進める足がかりとなることが期待されます。
文責:八木 歩(博士課程後期課程)