小川ゼミの学生が国際開発学会の第32回全国大会で「優秀ポスター発表奨励賞」を受賞しました
2021年11月20日(土)、21日(日)の2日間にわたり国...
私は、2024年8月15日から9月4日にかけて、株式会社三祐コンサルタンツにおけるJICAインターンシッププログラムに参加しました。この18日間の集中的な実務経験は、国際協力の現場における実践的な知識と技能を習得する上で、大変貴重な機会となりました。私は、株式会社 三祐コンサルタンツが独立行政法人国際協力機構(JICA)から受託したマリ国地方行政能力強化アドバイザー業務(MALICOT)の一環として実施された国別研修「持続的発展のための地方行政強化」に携わりました。具体的には、以下の業務に従事しました。
本インターンシップを通して、私は多くの学びや発見を得ることができました。まず、地方行政における住民協働の重要性です。マリ国の行政官が、日本の事例から住民協働をキーコンセプトとして捉え、自国での適用を模索する姿は印象的でした。特に、滝川市や浦幌町での事例研究を通じて、彼らは地域住民の主体的な参加が、限られたリソースの中で効果的な行政サービスを提供する上で重要であることを強く認識し、具体的なアクションプランに反映させていました。この点は、私が研究対象とする教育分野においても、学校運営への保護者や地域住民の参加を促進する上で重要な示唆を与えるものでした。
次に、実務としてのフランス運用能力の有用性と課題も実感しました。フランス語を使用してマリ国の研修員とコミュニケーションを取る中で、言語能力の重要性を再認識しました。日常会話から専門的な内容まで幅広く通訳を行う機会があり、自身の語学力の向上にもつながりました。一方で、専門用語や行政システムに関する概念を正確に伝えることの難しさも痛感しました。この経験は、国際協力の現場で働く上で必要とされる、専門知識と言語能力の両立の重要性を示唆するものであると考えます。
さらに、本インターンシップを通じて、JICAのような公的機関での業務と現場での業務の違いを体感しました。特に、マリ国の行政官との直接的な活動や、日本の地方自治体での実地研修を通じて、現場での経験がもたらす学びの深さと充実感を強く感じました。札幌市、滝川市、浦幌町での研修では、それぞれの地域の特性に応じた取り組みを直接見聞きし、理論だけでは得ることのできない実践的な知見を獲得できたと感じています。この経験から、将来のキャリアとして、より現場に近い立場で国際協力に携わりたいという思いが強くなりました。
一方で、インターンシップ中にいくつかの困難に直面しました。まず、専門外の知識取得に苦労しました。当初は、地方行政に関する専門知識の不足に戸惑いを感じましたが、事前学習期間を利用して基本的な文献を集中的に読み込み、インターンシップ期間中も積極的に質問し、職員の方々や参加者から学ぶよう心掛けました。また、教育経済学の視点から地方行政を捉え直すことで、新しい知識を自身の専門性と結びつけることを意識しました。
加えて、多岐にわたる業務への対応にも苦労しました。研修の帯同、通訳、記録など、多様な業務を同時に取り組む必要がありましたが、毎日の業務開始前にスケジュールと優先順位を確認し、小まめにメモを取って重要な情報を整理し、研修スタッフと密に連携することで困難を乗り越えることが出来ました。
本インターンシップは、教育経済学を専攻する私にとって、国際協力の新たな側面を学ぶ大変貴重な機会となりました。特に、地方行政能力強化が教育を含む様々な分野の発展に不可欠であることを、実践的な経験を通じて深く理解できたことは大きな収穫でした。マリ国の行政官が、日本の事例から住民協働の重要性を学び、具体的なアクションプランに落とし込んでいく過程は非常に印象的でした。
今後はこの経験を活かし、専門性の拡張、語学力の更なる向上、ネットワークの維持・拡大、キャリアプランの再考により一層取り組んでいきたいと考えています。具体的には、教育経済学と地方行政の接点に関する研究テーマの探索や、地方行政や公共政策に関する追加的な学習を進めるとともに、フランス語の専門用語の学習強化や英語でのプレゼンテーションスキル向上にも力を入れていきます。また、インターンシップで築いた人脈との定期的な情報交換や、教育と地方行政の両分野の専門家とのつながりも引き続き強化していきたいと思います。
末筆になりますが、この貴重な機会を提供してくださった独立行政法人国際協力機構(JICA)様、株式会社三祐コンサルタンツの皆様、神戸大学大学院国際協力研究科の皆様、そして応募から参加に至るまでご支援をいただいた小川啓一教授に心より感謝申し上げます。また、共に学び、多くの示唆を与えてくれたマリ国からの研修員の皆様、研修でお世話になった札幌市、滝川市、浦幌町の関係者の皆様にも心からの感謝を申し上げます。
この経験で得た学びと人々との繋がりを大切にし、教育経済学の専門性を活かしつつ、より幅広い視点から国際協力の分野で貢献できるよう、一層の努力を重ねてまいります。ここで得た経験と知見を、今後の研究活動やキャリア形成に最大限活かし、国際社会に貢献できる人材となれるよう邁進してまいります。
文責:大河原陸人(博士前期課程)