国連と持続可能な開発目標「ユネスコのTVETと技能の予測戦略」(片山弘倫博士)

2022年1月15日、神戸大学大学院国際協力研究科の小川啓一教授による「国連とSDGs」の授業にて、ユネスコ本部プログラムスペシャリストの片山弘倫博士を招聘し、「ユネスコのTVETと技能の予測戦略」と題した講演を行いました。片山博士は、神戸大学大学院国際協力研究科にて修士号、ピッツバーグ大学にて博士号を取得した後、国際協力機構(JICA)、世界銀行、OECDでの勤務を経て、ユネスコ本部にて現在勤務されています。

片山博士の講義は、ユネスコの紹介から始まった後、産業人材育成・職業技術訓練(Technical and Vocational Education and Training :TVET)が持続可能な開発目標4(質の高い教育)、目標5(男女平等)、目標8(働きがいと経済成長)、目標13(気候変動対策)と密接に関係していることを強調すると共に、TVETが他の開発セクターとどのように連携しているかを説明されました。また講義の最後には、2021年に締結された「ユネスコTVET戦略」の概要について説明され、ユネスコの今後の指針についてお話をいただきました。

講義の中で、片山博士は特にユネスコがTVET戦略の一つとして重点を置くスキル予測・評価について、将来の労働市場におけるニーズ把握の重要性、スキル予測の方法論、TVETが現在直面している課題などを紹介し、詳細な説明をされました。特に、TVETが直面している課題として、教育省や労働省等、様々な省庁のデータソースが複数あるために、一律なデータの収集・管理・利用が困難であることについて言及されました。この問題の解決策として、片山博士は、各国のTVETに関するデータのビッグデータ化を挙げました。そして、ビッグデータの分析と将来の労働市場におけるスキル予測についてより深く理解するために、片山博士はミャンマーを具体例として、2017年から2018年の職業分布、労働力需要、職業スキル需要のビッグデータによる分析を示されました。また、労働力調査との比較によるビッグデータの様々な利点も紹介されました。

講演後に設けられた質疑応答の時間には多くの参加者から、講演内容と参加者の研究テーマとの関連や、TVETに関する意見など、熱心な質問が寄せられ、片山博士による丁寧なご回答をいただきました。TVETは、近年の国際機関において重要な分野の一つであり、今回の講義は、国際機関で長く活躍されている経験豊富な先生方とのコミュニケーションにより、理解を深め、思考論理を鍛えることができました。これらは将来国際機関にて働くことを考える皆さんにとって良い機会となったのではないでしょうか。

文責: Ji Xinyu(博士前期課程1年)