小川啓一教授がバングラデシュで開催された国際学会において基調講演を行いました

2022年3月19日、小川啓一教授は、ダッカ大学日本学科主催の国際ハイブリット学会「ポストコロナの日本:経済・政治・社会・文化・文学」にて『COVID-19感染拡大下における日本の高等教育の学習「損失」と学習「成果」』という題目で基調講演を行いました。

小川教授は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大下における日本の高等教育の学習「損失」と学習「成果」について説明し、政府と大学機関の教育の質を維持するための諸施策を紹介しながら、ポストコロナの高等教育の発展に向けた重要な教訓を示しました。学習「損失」について、COVID-19感染拡大下の日本の高等教育現場は、限定的なオンライン学習環境の普及、実践的技術の向上機会の損失、外国人留学生の受け入れの減少、といった課題に直面していると指摘しました。また、多くの大学ではキャンパスへの入構が制限され、研究方法や研究テーマを変更せざるを得ない学生や、心身の健康問題に悩まされる学生もいたことを示しました。

このような学習機会の損失や学習形態の変化への対策として、日本政府が行ってきてきた学生への財政支援、ICT教育の推進、ロボット技術及び人工知能を用いた実験の自動化の促進、外国人学生を円滑に受け入れるシステムの構築といった施策を紹介しました。大学機関側は、研究方法に関する特別セミナーの開講や学生への心理的ケアサービスを行う事で、学生の質の高い学習機会の保証と心理的ストレスの軽減が行われたことを説明されました。

これらのCOVID-19による諸課題への対策を通じて、COVID-19は日本の高等教育に新たな「成果」を生み出すことにも繋がったと指摘されました。その成果として、1)高等教育におけるデジタル化の加速、2)遠隔授業スタイルの選択肢、3)グローバルなネットワークの拡大などの学習成果の三点を挙げました。具体的に、これまで日本の教育現場へのICTの導入は遅れていましたが、COVID-19の流行によって行われたオンラインラーニングの積極的導入を機に、日本の高等教育ではICTが急速に発展したことを説明されました。オンデマンド型授業やライブ型オンライン授業、ハイブリット型の授業など遠隔授業スタイルの選択肢が増えたことで、講義内容に適した講義を実施することが可能になったことや、神戸大学を実例にオンラインインターンシップやオンラインダブルディグリープログラムを通して、学生がCOVID-19感染拡大下においてもグローバルネットワークを拡大することができたことなどの学習成果が説明されました。

本講義は、ポストコロナの日本に関心のある研究者・学生にとって、日本の高等教育の学習「損失」と学習「成果」の観点から理解を深める貴重な機会となりました。

文責:宇野耕平 (博士前期課程1年)