マラウイにおける研究調査報告(石井 雄大)

 2024年1月3日から3月3日までの約2ヶ月間、マラウイにて在外研究を実施しました。以下、その報告をさせていただきます。私はマラウイ大学教育研究訓練センターにて、児童の初等学校就学に係る世帯内意思決定の特徴とその過程を調査するために、主に以下に挙げる研究活動を実施しました:(1)研究計画の精緻化及び現地調査の準備、(2) 同センターが実施するリトリート会議への参加、(3)公立小学校を訪問し、既婚女性へのインタビュー調査及び質問紙調査。

 1つ目の研究活動では、研究計画の精緻化及び現地調査の準備として、同センターの局長であるDr. Dorothy Nkhata、リサーチフェローであるMs. Esme KadzamiraとMs. Lizzie Chiwaulaに研究概要と現地調査計画を発表し、頂いたコメントをもとに研究計画の修正や追加の文献レビューを行いました。また、同センター職員のご指導のもと、現地調査で使用する質問紙やインタビュースクリプトについても、マラウイの文脈に沿いながら、英語及び現地語で作成しました。文献レビューでは、マラウイにおける親族構造(母系、父系、母方居住、父方居住)について、学術的な観点と現地の実情を交えた現実的な観点の両方から理解を深めることができました。

 2つ目の活動として、私は同センターが主催するリトリート会議へ参加しました。同センターが実施している教育に関する研究プロジェクトの中期計画や戦略、国際機関や研究機関をはじめとする各ステークホルダー間の連携など、研究者がチームとしてどのように研究プロジェクトを実施しているのかを、実務の観点から理解を深めることができました。また、プロジェクトに関わる研究者や実務家との意見交換をすることもでき、自身の研究者としての人脈に大きな影響を与える貴重な機会となりました。

 3つ目の活動では、既婚女性がどのようにして児童の教育に関する世帯内意思決定に関与しているのか、どのような要因が関連しているのかを明らかにするために定性調査を実施しました。具体的には、ゾンバ地区の公立校3校を訪問し、既婚女性15人に対してインタビュー調査及び質問紙調査を行いました。調査対象地域では、結婚後に妻方両親の家に同居する伝統(=婿入り)が存在しており、家父長制社会のような世帯内意思決定を夫がするものという認識がなく、世帯内で意見が異なる場合は交渉を通じた意思決定がなされることが明らかになりました。妻の教育レベルや経済力向上、親族を支援することで良い評判や信頼関係を得る等の要因間の関係性を分析し、特定の意思決定の過程の検討を今後の課題として引き続き研究・調査に励みたいと考えております。

 末筆になりますが、マラウイ大学教育訓練研究センターにおける在外研究を受け入れてくださったDr. Dorothy Nkhata、Ms. Esme Kadzamira、Ms. Lizzie Chiwaula、およびチームの皆様、そして大変貴重な機会を提供して下さった指導教員の小川啓一教授に拝謝申し上げます。

文責:石井雄大(博士課程後期課程1年)