小川ゼミの学生が執筆した教員の動機付けに関する論文が国際雑誌に掲載されました。
小川ゼミの矢野泰雅さんが執筆された『Teachers’ mo...
2025年8月17日から9月13日にかけて、フィリピン・レイテ島タクロバン市に所在する東ビサヤ州立大学(Eastern Visayas State University:EVSU)において、Faustito A. Aure教授のご指導のもとでインターンシップを実施しました。本インターンシップは、修士論文研究の一環として行ったものであり、2013年11月のスーパー台風ヨランダ(国際名:ハイヤン)からの復興の一環として建設された再定住地を対象に、被災後の住民の生活再建と学校の役割を中心に調査を行いました。特に、ヨランダ襲来後の住居移転から現在に至るまで、再定住地へ移転した人々(とりわけ子どもをもつ家庭)と地域の学校がどのような課題を抱え、誰と支え合ってきたのかを明らかにすることを目的としています。また、再定住地に対する愛着や定住意識がどのように形成されてきたのかについても考察対象としました。子どもの教育環境を支える家庭・学校・地域の関係性に着目し、災害から約10年を経た人々の暮らしや意識を質的に調査しました。
調査期間中は、東ビサヤ州立大学の協力のもと、タクロバン市教育局(DepEd Tacloban City)の正式な許可を得て、タクロバン北部の5つの再定住地を訪問しました。再定住地に位置する既存の学校と、再定住政策の一環として新たに開設された学校を拠点に調査を行いました。校長・教員・保護者・若者・地域リーダーなど計55名に対して半構造化インタビューを実施し、「移転初期」「コロナ禍」「現在」の3時期を軸に、生活・教育・地域関係の変化について聞き取りを行いました。
フィールドを通じて、教育開発の実践には、制度的な支援や外部からの介入だけでなく、地域社会の中に根づくつながりや助け合いの力をいかに生かすかが重要であることを再認識しました。現地では、学校を中心に保護者や地域住民が協力し、限られた環境の中でも子どもたちの学びを支える姿を数多く目にしました。その背景には、人々の主体的な努力と温かな助け合いの文化があり、こうした日常的な関わりの積み重ねこそが、被災からの回復や地域の持続的な発展を支えているのだと感じました。
また、現地の人々の優しさや、初対面の私にも親しみをもって接してくださる姿勢を通じて、人と人との信頼関係が地域の強さを生み出していることを改めて実感しました。こうした助け合いの文化や相互支援の姿勢は、核家族化や地域のつながりの希薄化が進む日本社会にとっても、多くの学びと示唆を与えるものであると感じました。
この経験を通じて、学校を中心としたコミュニティの形成や人々の交流が、人々の暮らしや地域の再建にどのように影響しているのかを、今後の研究の中でより丁寧に探っていきたいと考えています。また、若者へのインタビューを通じて、教育の無償化により就学の機会が拡大したことを実感した一方で、卒業後の安定した就労には十分つながらず、生計の持続可能性を支える雇用機会の確保が依然として重要な課題であることを強く意識するようになりました。教育と雇用の連続性をどのように確保していくかは、今後の研究と実践の双方において、引き続き検討すべき重要なテーマであると認識しています。
末筆ながら、本フィールドワークの実施にあたり、教育省や現地校への許可取得をはじめ、現地調査の全過程にわたり多大なるご協力とご指導を賜りました東ビサヤ州立大学のFaustito A. Aure教授に、心より感謝申し上げます。また、温かく迎えてくださったAnalyn C. Españo博士をはじめとする東ビサヤ州立大学の学生・国際・渉外担当副学長室の皆さま、調査にご協力くださったタクロバン市教育局および各学校・地域の皆さま、ならびにインタビューにご協力くださった住民の皆さま、地域リーダーの皆さま、学校関係者の皆さまに、深く感謝申し上げます。さらに、インタビューの調整や通訳をはじめ、現地での調査活動を丁寧にサポートしてくださったEsquierdo氏に、心より感謝申し上げます。また、本調査の準備および現地調整に際し、多大なご助言とご支援を賜りました桜井愛子教授に、深く感謝申し上げます。そして、日頃よりご指導と温かいご支援を賜っております小川啓一教授に、心より厚く御礼申し上げます。
文責:岡本京子(博士前期課程2年)