FHI360でのインターンシップ(高橋香名)
私はダブルディグリー制度にてイーストアングリア大学留学中にコ...
2014年8月25日から10月4日までの約6週間、ラオス人民民主共和国の教育スポーツ省の計画局にて、インターンシップをさせていただきました。私は、ラオスの初等教育における退学率、修了率などの地域間格差に関心があり、就学阻害要因をテーマとして調査させていただきました。夏季休業を利用した6週間という短い期間でしたが、ラオス教育スポーツ省計画局の政策担当官が実施している政策研究の補助、また同計画局が国際援助機関と共同で実施する教育プロジェクトの企画、運営、評価等のプロセスに関する様々な業務に、実務補助として携わることで学び得た点について、以下に報告いたします。
まず、ラオス教育スポーツ省計画局の政策担当官が実施している政策研究の補助する活動をし、2007年より開始されたNational Assessment of Student LearningOutcome (以下ASLO)の第Ⅲ版の作成業務に参加させていただきました。ASLOでは、初等教育を受けている生徒達にラオス語、算数、自分たちの身のまわりの世界、という3つの項目についてテストを行います。そしてその結果Household Survey Dataを見比べることで、それぞれの地域の生徒達の特徴を把握し、得られた知見を将来の教育の発展に役立てることが意図されています。
第Ⅰ版から現在作成中の第Ⅲ版まで共通して見ることの出来た結果は算数能力の低さです。これには様々な理由がありますが、主に教科書の内容が非常に分かりにくく、また教師がその教科書に沿って指導することで評価されてきたという事情がありました。ASLOは各地域を非常に詳細に分析しているのですが、その分析を通じて明らかになった問題に対する解決策などは述べられていないことが残念でした。しかし今後も、様々な機関を通して教育分野における調査、研究をどのように行うのか、ASLOから学んでいきたいと考えています。
第2に、首都ビエンチャンにある小学校を5校訪問させていただきました。その中の1つの小学校の校長先生に教科書と指導方法のお話を伺った際、偶然にも前年度より算数教科書作成班の一人に選ばれた校長先生とお会いすることが出来ました。教科書の内容は難しくはないが説明文が非常に複雑で、生徒達が理解できると思えないとはっきり指摘されていました。この校長先生は生徒の理解を第一に考えた指導法を授業に取り入れたことで生徒の成績は遥かに向上し、ラオスにおけるモデル校となり、現在では周辺地域から生徒が殺到しているそうです。しかしこれが非常に問題で、「生徒が殺到することによって、教師一人当たりの生徒数が増えることで質が低下するのではないか。しかし教師を増やして対応するほどのスペースはなく、予算も厳しい。しかし学びたい子供達を受け入れないということはしたくない」とおっしゃっていたのが、非常に印象的でした。
第3に9月20日から22日に開催された文部科学省の政府開発援助ユネスコ活動補助事業「アセアン4カ国における教育行財政研修ガイドブックの検証と活用」に教育省の立場から参加させていただきました。小川啓一教授と指導学生のViriyasackSisouphanthongさんが講師を勤められ、またEducation Management Information System Centerを中心に、ラオス全土から集まった政府機関の教育担当官が、現在のラオス教育状況についておさらいした後、Excel、Stata等の分析ツールの使用方法を学びました。教育スポーツ省の地方行政官の方々が「もちろんデータは集めるが、このように自分で分析したことはなかったので、今後は地方からも集計した教育データを中央に発信するのに必要な分析力を身に着けることができた。また、分析した結果を教育政策につなげるのにとても良い研修になった」と、おっしゃっていたのを鮮明に覚えています。小川教授の研修のもと、ラオスの基礎教育データベースを活用した教育プログラムの分析・評価を行い、レポートを作成するというインターンシップのもう一つの目的にむけた活動をみなさんと同様にさせていただいたことで、分析ツールへの理解がさらに深まりました。
6週間という短い期間でしたが、学校の先生や省関係者の方々から、ラオスで生活する日本人まで、実際にお話を伺うことができたこの体験を今後のバネと糧にしたいと思います。
最後に、今回のインターンをアレンジしてくださった小川啓一教授、ラオス教育スポーツ省でインターンとして受入くださった計画局のBounpanh Xaymountry局長、ラオスにおいて様々な面で滞在を支えて下さった 教育スポーツ省・財務局のPhestsourine Norasingh氏、JICAラオス事務所の方々、各学校関係者に心より感謝申し上げます。
博士前期課程1年
元川 将仁