キャリアセミナー:世界銀行(世界銀行 Scherezad Latif博士・Bernard Yungu Loleka博士)

2024年7月23日、世界銀行の教育部門が取り組む課題と世界銀行におけるキャリア形成について学ぶセミナーが、本学国際協力研究科にて開催されました。講師として、世界銀行の教育プラクティス・マネージャーであるScherezad Joya Monami Latif博士と教育エコノミストのBernard Yungu Loleka博士が講演し、30名を超える参加者が熱心に耳を傾けました。

まずはLatif博士より、世界の教育の現状と課題を包括的にご説明いただきました。特に、「学習貧困(Learning Poverty)」の問題が深刻であり、10歳までに簡単な文章を読んだり理解したりできない子どもの割合を示すこの指標は、教育機会の不平等や教育資金の不足、パンデミックなどあらゆる影響を受けています。また、十分な教育を受けていない労働人材が雇用や生産性に与える課題から、知識とスキルの獲得の重要性にも言及しました。こうした教育に関わる多様な課題の解決を目指し、世界銀行は2000年以降、160カ国で教育プロジェクトを支援し、現在は258にのぼる教育プロジェクトに257億ドルの資金を投じています。Latif博士は、幼児教育や質の高い教師の育成等による基礎学習分野の発展と、労働市場で求められるスキルを得られる高等教育分野の改善の重要性をはじめ、適切な学習評価、データの収集・分析、気候変動やデジタル技術に関する教育など、時代に即した施策に取り組む世界銀行の今後の方向性を示しました。

続いて、Bernard博士からは、世界銀行で働く上で知るべきビジョンや、世界銀行で働くための機会をご紹介いただきました。世界銀行は「生活しやすい地球に貧困のない世界を実現する現在」を掲げています。さらに、2030年までに達成すべき目標を「極度の貧困を撲滅」し、「繁栄の共有を促進」することに定め、目標の達成にはインパクト、誠実さ、尊重、チームワーク、学び、適応の5つの要素が求められます。「なぜ世界銀行で働きたいのか」と問われた際に、世界銀行が目指す方向性や意義、必要な価値観を理解しておくことの重要性を、Bernard博士は強調されました。現在、世界銀行では170を超える国籍の職員が18,000人以上働いています。インターンシップや、世界銀行が提供する複数のプログラム、コンサルタントとしての契約など、様々な入り口があり、それぞれの要件やプロセスについてもご紹介いただきました。

最後に、参加者からLatif博士とBernard博士へ多くの質問が寄せられました。世界銀行に入る際に求められるスキル、活躍し生き残るための戦略など、豊富な経験に基づく的確なアドバイスをいただきました。特に、経験を積むこと、開発途上国の現場から学ぶこと、異なる国への適応能力や、困難な状況で働くことに対してオープンマインドをもつことなど、国際機関に挑戦する若者へのメッセージが詰まった貴重な時間となりました。

本セミナーでは、春学期に本学で集中講義を担当してくださったLatif博士と、小川ゼミの卒業生であるBernard博士から、世界銀行でのキャリア形成に有益な情報と励ましをいただくことができました。ご多忙の中ご講演をいただきましたLatif博士、Bernard博士、そして本セミナーの機会を作ってくださった小川啓一教授に、心より感謝申し上げます。

文責:廣瀬麻衣(博士後期課程)