ケニア・ナイロビにおける海外実習報告(八木歩)

私は2022年の10月6日から2カ月半、博士論文に関連する情報収集を目的としてケニア・ナイロビを訪問しました。博士論文では家計調査を使用した定量分析をメインとする予定ですが、データで不足している情報を補うという意味で大変有意義な機会となりました。神戸大学プレミアム・プログラムの研究助成を頂けたこともあって、長期間の滞在が可能となりました。

 ナイロビ滞在中はケニヤッタ大学のFransis Likoye Malenya博士の協力を得て、博士論文に関連する資料の整理に務めました。ケニアにおける就学前教育に関連する既存文献を整理するとともに、追加で必要な文献をMalenya博士に入手していただき、博士論文中の「ケニアにおける就学前教育の概観」を扱う章の執筆に務めました。また、実際に教育現場で使用されている教科書と教員用ガイドを購入したことも、カリキュラムへの理解を深めるうえで重要な参考資料となりました。

加えて、現地の就学前学校を訪問するとともに、教育関係者とのネットワーク構築にも務めました。Malenya博士の元教え子が教育局長を勤めるナクル県ギルギル郡を訪問し、複数の就学前学校を訪問させていただきました。2017年から始まった教育改革の進行状況に関して局長の経験を伺いつつ、学校・教室の様子を観察できました。校長先生・教員も大変好意的で、授業の様子や給与未払いの問題等に関して現場の声を聴かせてくださいました。

12月の調査終盤には、僥倖なことにケニアで大規模な学力調査を実施するNGO「Usawa Agenda (旧UWEZO)」の事務局長にお話を伺う機会を得ることができました。調査中に得た疑問を一度に投げかける貴重な機会となり、新しい教育システムや無償化政策の実施状況から、農村部の状況や家庭の個別具体的な事例に至るまで、広範な話題について回答をいただくことができました。また、学力調査のデータを博士論文で使用するにあたってのご相談をさせていただくことができたのも大きな進捗でした。

 今回の滞在はゆとりがあるスケジュールであり、時間の許す限り研究・教育機関の訪問等を計画していましたが、大統領選挙直後の治安面での不安およびコロナウイルスの関係で当初計画の完遂には至りませんでした。その点は心残りではありますが、日常生活の中で学生からタクシー運転手に至るまで、政治や教育改革に関連する人々の声に耳を傾けることができたのは、フィールドならではの貴重な体験でした。

 末筆になりますが、この度の渡航に際して、応募から参加に至るまでご支援くださった小川啓一教授、現地での研究支援をくださったFrancis Malenya博士および研究協力者の方々、神戸大学の研究助成を本海外調査に使用させていただけたことに心からの拝謝を申し上げます。

文責:八木 歩(博士課程後期課程1年)